短編
□BL的動物擬人化恋愛模様[完結]
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異世界アニマルワールド 。
獣から人型に進化した様々な獣人達が自身の特性に見合った職に就き、高度な社会を築き上げている不思議な世界。中でも小動物系が多く集う、ここタイニータウンは今日も朝から活気に溢れていた。
「おはよイリヤ! 課題やってきた?」
「もちろん。おはようティミー」
ロボロフスキー家のイリヤは、ハムスター系の中学三年生。おっとりのんびり穏やかな性格で、タイニータウンのシンボルでもあるアニマルライフ研究所所長の孫だ。
隣を歩くシマリス系のティミーとは幼馴染みであり、日頃から行動を共にしている"ご近所さん"でもある。タイニータウンでも一際小さく愛らしい彼らを、学校や町の人々は温かく見守っていた。
「なあ近道して行こうぜ!」
「あ、ダメだよティミー。昨日もホーク先生に注意されたばかりだろ?」
不意に角を曲がり薄暗い路地に入っていったティミーをひき止めようと、イリヤは慌てて追いかける。
温室育ちの箱入り息子で他人を妬むことも無く、今時珍しいほど素直に育ったイリヤを邪な目で見る者も少なくないが、周りの心配を他所に二人は小さな冒険が好きだった。
「大丈夫だって! リックスさんとこでお菓子買ってこうぜ」
「うーん、今日はやめとく。お爺様を悲しませたくないし」
「ちぇっ、ホーク先生目ざといからなぁ。すぐチクるしさー。イリヤが鈍くさいから見つかったんだぞ」
「うん。ごめんね」
「まあいいや。今日は俺だけで行くよ。なんか欲しい物ある?」
「一人じゃ危ないよ?」
「平気平気! ミントゼリーとキャラメルポップコーン買っといてやるからなー!」
大きなシッポを器用に使いながら、リス特有のすばしっこさで路地裏の高い壁をスルスル駆け上ると、ティミーは手を振って塀の向こうに消えていく。
「気を付けてねー」
友人の消えた壁に向かって声をかけても返事はない。途端に怖くなり、イリヤはキョロキョロと辺りを見回した。
整備の行き届いた明るい大通りとは違い、路地裏は素行の悪い雑食系の若者達が闊歩する世界。カラースプレーの落書きでいっぱいの壁やゴミだらけの地面に、夜の気配が残っていた。
「あれ〜? こんな所で何してんのお嬢ちゃん」
「あ」
背後からの呼び掛けに振り返ると、大通りへ戻る道を塞ぐようにして二人の男が立っていた。イタチとキツネの彼らは、肉食系にも草食系にも馴染めないはぐれ者だ。
「ん? なんだ、どこのメスかと思えばイリヤ坊っちゃんじゃねえか。丁度いいや、イイことして遊ぼうぜ」
「あの、ごめんなさいボク学校が」
「ああ? 俺らみたいな貧乏人とは遊べないってのかよ」
「違うよ。そんなことないよー」
「じゃあ来いよ。今日こそヒィヒィ言わせてやるぜ」
キツネはイリヤの腰に腕を回すと強引に抱き寄せた。イリヤの細い首筋に鼻を押し付け、ご機嫌な様子でフンフンと鼻を鳴らす。
「キモチイイ思いして、その上動画でも撮って売れば一石二鳥のボロ儲けだなあアニキ」
下卑た声で厭らしく笑うイタチの言葉が理解できないのか、イリヤは首を傾げた。散々イリヤの匂いを楽しんだキツネは、次はその首をあむあむと食んでいる。
「あのう、学校が終わってからじゃダメですか? 放課後ならいっぱい遊べるからー」
「バカかお前は」
「え?」
「誰だっ!?」
突如頭上から降ってきた低音に驚き塀の上を見上げると、鋭い金の眼光が射抜くように見下ろしていた。