挨拶



朝は、嫌でもやってくる。




ピピピピピピ…


携帯のアラーム音が部屋中に響き渡る。

その部屋の主の枕元で、携帯は自分の存在を主張するかのようにいつまでも鳴り続ける。

暫くして、もぞもぞと動き始めたその人の手が、あちこちに伸ばされ、ようやく携帯の鳴き声を黙らせる。


「うー…ん…。」


布団の中で唸っていたが、意外と寝覚めは良いらしく、その後ベットから出てきたかと思うと、金髪の綺麗な髪の毛を整えながらテキパキと寝巻きから制服へと着替え終わった。

すると、丁度その頃、彼の部屋の階下にあるリビングから、彼を呼ぶ母の声がした。


「キラー、カガリー?起きなさい、朝ごはん出来たわよー?」


その声にカガリは元気のいい返事をはーい!と返し、荷物をまとめて階下へと下った。

家を出る準備を全て済ませリビングに着くと、母が朝食の仕度を整え終えたところだった。


「おはよう。」

「おはよう。さ、さっさと朝ごはん食べちゃいなさい。」


はーい。と返事をして自分の席に座る。

父はもう既に仕事に出たらしく、母がその食器の後片付けを始めた。

少しすると、彼の兄弟がリビングへとやってきた。

格好はまだ寝巻きだ。


「母さん、カガリ…おはよ…ぅ。」


未だ眠そうにしている弟に向かってカガリは笑顔で挨拶する。


「おはよう、キラ。今日もギリギリか?お前。」

「…カガリに言われたくなぁい…。」


キラは憮然とした表情で自分の席につき朝食を食べ始めた。


(寝起きだっていうのに、かわいい奴。)


と、キラを眺めながらカガリは自分の朝食を済ませた。


「ごちそうさまー。」

「えっ?!もう食べ終わったの??」


今食べ始めたばかりのキラは驚いてカガリの食べ終わった食器を眺める。


「当たり前だ!お前が遅いんだよ。」

「いいじゃん、別に。遅刻しないし。」


確かにキラは遅刻したことがない。

いつもギリギリなくせに、必ず朝の本鈴には間に合うのだ。


「…皆勤だもんなー…お前。」


カガリは悔しいとか妬ましいといった気持ちは全くなく、むしろそんなキラを尊敬していた。


「カガリだって、やれば出来るのに…。」


カガリの場合、両極端で、今日みたいにきちんと余裕を持って起きれる時もあれば、その欲求にしたがって延々と眠り続けていることがある。

そんな時は、誰がどんな手段を使って起こしても、全く目覚めようとしないのだ。

ただそれは、キラ曰くカガリの意識の低さの表れ…らしい。


「だって、眠いのはどうにも出来ないんだ。」

「起きれる時もあるのにねぇ?」


二人が話していると、ピンポーンと玄関の呼び鈴がなった。


「あ、アスランだ!」


カガリは椅子から元気よく飛び降り、玄関へと向かった。

キラはそんなカガリを悲しそうな目で見送り、何もなかったかのように朝食を食べることに専念した。


「そういえば、彼が来るようになってからだよ。」


カガリが毎日きちんと、寝坊せずに起きてくるようになったのは…。


玄関にたどり着くと、外に濃紺の黒髪の少年が立っていた。

カガリは勢いよく扉を開き、彼を招き入れる。


「アスラン!おはよう!!」


そんなカガリに、アスランは笑顔で応える。


「おはよう、カガリ。」













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