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□@親愛なる…
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彼女からのメールは、いつもこの言葉から始まる。

親愛なる、アレックス・ディノ様・・・



親愛なる…


***

元気ですか?
私は相変わらず、元気です。
今日から私も新学年になります。
何だか不思議な感じがするな…。
今年は生徒会の席にも呼ばれているから、主催者側として、いつもより行事を楽しめそうな気がします。
これも全て、何から何までアレックスのおかげです。
本当に感謝しています。
また、近いうちに連絡します。
それでは。

カガリ・ユラ・アスハ

***


一通り文章を読み終えると、彼はその文章が映し出されていた画面を消した。
そして、パソコンの電源を静かに落とす。
すると立ち上がり、その場から退いた。

男の名は、アスラン・ザラ。

その容姿は、まさに天が与えた産物であるかのように妖しい美しさを保っていた。
髪の毛は闇夜のような漆黒に藍色を挿した光を放ち、瞳は透き通る碧色で宝石のエメラルドを思わせる程の煌めきを称えていた。
目鼻立ちは整い、その顔立ちはまさに感嘆に値する。
そればかりではなく、すらりと伸びた逞しいその身体は、美しさの中に確かに男を感じさせる。

そして、彼の魅力はその容姿だけに留まらなかった。
アスランは、かの有名なザラグループの御曹司だった。
現在存在している大手企業、その他有名財閥の裏には全てザラグループの手が及んでいると言っても過言ではない。
そして何より、ザラグループをここまで急成長させたのはほかでもない、アスランだった。

もともとアスランの父であるパトリック・ザラの立ち上げたグループはそこらの中小企業と何ら変わりない一企業だった。
しかし五年前。
ザラグループの手懸けるあるプロジェクトに関して、当時12歳であったアスランが父にある提案をした。
パトリックは当初、小学生であるアスランが父の仕事に口を出してきたことに猛反発をしたが、その提案に目を通したパトリックの部下がアスランの頭の中にある緻密な計算と今後の計画に気付き、パトリックを宥め彼の提案を推し進めた。
その後はまさにとんとん拍子だった。
そのプロジェクトを支援していた大企業が発案者の能力に目を付けた。
最初はその企業に手を貸してゆく形でアスランを参謀にしたザラグループはその権力を強化していったのだ。
企業から企業へと口コミは広がり、ザラグループは現在の地位を獲得した。

そして二年前、ついにパトリックは会長職に身を退きアスランが父の後を引き継ぐ形で、代表取締役という実権を手に入れたのだ。
現ザラグループを率いている人間が若干17歳の高校生であるということはあまり知られてはいない。
しかし、彼のもつ美と財と知性は、全ての者が一目置く程洗練されたものだった。

もちろん世の中の女性はきっと、誰もが彼を放っておくことはないだろう。



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