学園BASARA
□恋愛フェチにも程がある
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『はぁ…』
視線の先には――
「へぇすごーいっ!」
「慶次くん頼りになるぅ♡」
「へへっ!俺でよければいつでも相談乗るよ!」
女の子たちに囲まれて得意になっている男。
前田慶次。
自称か他称か定かではないが、恋愛フェチで有名で、この学園内でこの男を知らない者はいない。
ついでに『KGの恋愛相談室』というものまであるらしく、学校中の恋に悩める女子が相談に来るのだという。
ばかばかしい…。
人の悩みを聞くだけならまだしも、前田慶次に相談すると恋が叶う!なんてジンクスまである。
人の恋路に首を突っ込むこと自体、私には理解できない。
ましてその恋の責任を持つなんて…
この男、軽いにも程があるっ!!
そう、前田慶次という男には『軽い』という二文字がピッタリなのだ。
『はぁ〜…』
本日2回目ののため息を吐く。
どうして皆こんな男に騙されちゃうかなぁ…
不思議でたまらない。
…とか考えていたら。
「あれ?名前ちゃん!ため息なんて吐いて、恋の悩みかい!」
『………』
今ちょうど批判していた男が目の前に現れた。
いきなり『ちゃん』付けなんですね。
…ってか、
何なのこのテンションの差!
こいつの頭そればっかなわけ!?
が、私がそんなことを考えているとは知る由もないこの男は、一人でどんどん話を進めていく。
「いやぁ名前ちゃんって堅物っぽいイメージあったからさ!意外だなぁ〜 うん、でもやっぱ恋はいいねぇ!」
…しかも何気に失礼だ。
というか何故か勝手に恋だと決めつけられている。
やっぱり頭の中そればっかりだったようです。
無論私は恋などしていない。
どっかの熱血ウブみたいに 破廉恥ィィィ!! とかは思っていないのだが、なんとなく恋とかそういう軽い話題は避けてしまっているのだ。
だって、面倒だと思うし。
…こういう所、冷めてるのかなぁ。私って。
でも軽すぎるのもどうかと思う!!
と、いうことで!
ここはさっさと誤解を解いて退散していただこうではないか。
『あー、あの。前田くん?』
「なんだい!」
…うっわぁキラキラしてんなぁ……
これ絶対私が相談すると思ってるよね。
でも悪いな!!
私はそんなに甘くないっ!
『私、恋とかしたことないから』
別にしたいとも思わない。
そう付け加えると、前田慶次は心底驚いたという顔をした。
ふんっ、どうよ!
世の中あんたみたいなヤツばっかじゃないわ!!
――この時きっと私は勝ち誇った顔をしていた。全力で。
でもこれが、アダを為すこととなる…