学園BASARA

□My Sweet!
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最近私は懐かれたようだ。


「名前殿ぉぉぉ!」


うん、コレ。

動物に例えるなら犬。


「名前殿!」


犬種は柴犬あたりかなぁ。


「…名前殿?」


赤い首輪とかしてたら可愛いかも。


「無視でござるかァァ!?名前殿ォォォ!(泣)」



『…え?あ、ごめん何?』



脳内で幸村を犬化させて面白がっていたら、返事をするのを忘れていた。

目をウルウルさせちゃって。

本当に可愛いと思う。

同じ学年なのだが、佐助や政宗と違って無邪気な分← 年下に思えてしまう。



やっと返事をした私の方にハッと顔を向ける幸村。



「やっと返事をしてくれたでござるゥゥ!(ぱぁぁぁ)」



さっきまでシュンとしてたのに、打って変わって今はすごくしっぽを振っているような……幻覚?



『ごめんごめん!で、どうしたの?』


「あっ!!そうでござった!」



そう言うと幸村は慌ててポケットをがさがさ探り始めた。

そして、何か見つけた!という表情をして




「名前殿!共に甘味屋に参りましょうぞ!!」




‘2割引き’と書かれたクーポン券を握りしめて叫んでいた。



『……はい?』




いきなりすぎて驚いた。

と、いうか幸村が誘ってくるなんて珍しすぎて今何が起こっているのか把握できずにいた。




『え…と、甘味屋?』


「甘味屋でござる!!」


『……』





正直あんまり気が進まない。

私甘いもの苦手だし…


でも、

幸村の目、すっごいキラキラしてるし…




「嫌…で、ござるか?」



そ、そんな潤んだ目で見られたら…!



『…行く』


「誠にござるか!?うおぉぉ!では行きましょうぞぉぉ!!」





…負けた。

だけど、そもそも何故幸村は私を誘ったんだろう。

いつもなら佐助でも引っ張っていくのに(っていうか出来ればそうして欲しい)


何か、大事なことを忘れているような……











@甘味屋

「うおぉぉー!美味しゅうござる!甘いでござるゥゥ!」


『……。』



滅多にないことだから私もそれなりに期待はしていた…ん、だけど。


周りの視線が痛い、デス。

いやあ、ね?


幸村は可愛いし、普段から叫んでるし、このテンションも別に慣れてるんだけど……




「次はほへにふるへごはる!(※次はこれにするでござる!)」




如何せん量が…ね?

うっ、見てるこっちが気持ち悪くなるくらい食べている。



『ちょっと幸村、食べ過ぎ…』



明らかに食べ過ぎている幸村を止めようとした時。




「や〜ん、あのカップルかわいい〜w」


「ってか彼氏食べすぎだろww」




近くにいたカップルが私たちの方を見て盛り上がっていることに気づいた。


…え?カップルって私たちのこと?

まぁ男女二人で甘味屋なんていたらそう思われて当たり前かぁ。


……ってあれ?


ふと周りを見て私は気が付いた。


え…なんかカップル多くない!?


そうです、むしろ周りカップルしかいない!


そして私は気が付いた。

きょ、今日ってもしかして……!





「名前殿!」


『わぁぁっ!』


「!?ど、どうなさった!?」





た、たた大変だ!

今日って一年に一度の――


バレンタインデー!!?


わ、忘れてたーー!


顔面蒼白とはこのことだ。

そういえば昨日かすがが上杉先生にチョコ作るとか言ってた!

それにお市ちゃんも幸せそうにチョコのいい香りを漂わせて…



でも!


幸村からも何やら焦げくさい匂いがしてたから!!

なんかチョコ作り流行ってるのかなぁ、とか思って!

幸村からチョコ香りしたから…あぁまぎらわしいっ


って… そんなこと考えてる場合じゃなくて!



もしかしたら私は大変なボケをかましているかもしれない。

もしかして、今日幸村が私を誘ったのは…。





「名前殿…?」


『幸村』


「な、なんでござるか?」


『…今日って何の日?』


「っ!////」




私の予想が当たっていたのか、聞いたとたんに幸村は顔を真っ赤にする。


―あぁ、なんだ。

少し顔が綻ぶのが分かる。


どうしてこんなに幸村は可愛いんだろう。

私は、こんな幸村が――



その時、



「そっ某!名前殿をお慕い申し上げておりまするぅぅ!!」



幸村が、店内中に響き渡る声で叫んだ。

ついでに、どこかでブッと吹き出す音も聞こえた。



『ちょ、ちょっと幸村!』


私が焦って身を乗り出すと、


『わっ!』


逆に腕を引っ張られて、ぎゅうぅ、と抱きしめられてしまった。



「すごぉい」


「大胆〜!」



周りからも大注目されている。

あぁ再び視線が痛い…

って、いうか……えぇぇ!?


でも張本人の彼は全く気にしていないようで、



「某!名前殿のためにちょことやらを作ろうと思ったんでござるが、思いのほか難しく…。困っていたところに慶次殿と佐助が現れ、ここのクーポン券をくれたのでござる!」



今日ここに来たわけを話し始めた。


『そ、そうだったんだ』



今日のことは慶次が提案したらしい。

幸村が焦げくさかったのは、私のためだったんだと思うと。


あぁもう、

どうしてこんなにも。

甘くて、愛しい。



『…私も、好きだよ』



抱きつきながら、ちょっと震えている幸村にささやいた。











その後、イタズラ心で


『今日は破廉恥とか言わないのね?』


と言うと

我に返り自分の状況に気がついた幸村が



「………あ」



この直後に幸村が絶叫しながら卒倒したのは言うまでもないのでした。




My Sweet!

(今日は一段と甘くて、愛しい)
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