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□あら残念
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「あのさぁ」

「な、なんだよ」

屋上庭園へと続く階段で自分たちの鬼ごっこは終わった

若干息絶え絶えなのはご愛嬌。

二つ上の段にいる会長の手を掴んだまま、言った


「なんで会長が逃げてんの?」



時を遡り数分前、あの事件から漸く回復した私はなんだかんだ言って生徒会室に来てしまった
でも、中には愛しの月子ちゃんすら居なくて
どうしたものか、と考えながら一旦引き返そうとドアに近づいた

そしたら自動ドアの如くドアが空いて

…まぁ必然的に相手を見ようと顏をあげる訳ですよ
別に?身長が低いから見上げなきゃいけないとかそんなことじゃないからな、断じて



…それは置いといて、
ドアを開けた張本人が、会長だった訳で


そしたらなんだか真っ赤になってワナワナしだして
理解不能な言葉(宇宙人への交信だろう)を言いながら走って行ったのだよ
で、これは空気を読んで追いかけたほうがいいと思って私も走り、そして捕まえた。どやぁ


「お前が…」

「なにさ」

「美絽がっ

…ごにょごにょ」


…はぁ、どうしたものか
手汗で若干湿ってきた手を横目で見ながら
会長の返答を待った
はぁ…なんだこのヘタレっぷりは‼最初の強引なまでの俺様は何処へ⁈

イラっときた自分は、気付いたら口を開いていた




「この前のことは‼」

「…‼」

一頻り大きな声で言えば、びくりと震える会長

「…っ気にしてない、とは言えないし
かと言ってこのまま逃げるのも自分としてはイヤだ。











だから、もう逃げないよ」


最終下校時刻を知らせる鐘が鳴り響いた
もう人の声すらしないこの階段で
自分はーーー。










「好きだよ、一樹」




でもね、でもね、本当は言いたくなかったよ。

だって、私はピエロだから。

本当の笑顔はもうあげちゃったから、貴方に贈る笑顔なんて、もうないんだよ




「…じゃあね、」


自分は、スルリと手を離して階段を降りた







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