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□11.3MEMORY
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───20年前 青森


オギャア、オギャア…


青森の、とある小さな町の産院で大きな産声をあげて生まれた一人の赤ん坊。


淡い色の髪の毛に、男の子なのに色白で、生まれた時から手足を器用にばたつかせていた元気な元気な男の子。


親は子供が生まれた瞬間から我が子の将来を夢見、案じるもの。


この子は将来どんな大人になるんだろう。


お腹をよく蹴っていたからサッカー選手かな?とか、


手足が器用に動くから体操選手かな?とか、


大きな声でよく泣くから声楽家かな?とか、


…色々夢を見るけれど、結局は誰しもがこう思う。



───いつまでも元気でいて、人の道を外しさえしなければ、平凡な人生でもいい────と………





──────────────


───2012年 東京吉祥寺



「ギャーースッ!ズババババーンッ!」


今日も仕事部屋には一人の元気な少年の奇声が響く。


…いや、もう彼は少年では無い。


今日この11月3日を以て、彼───新妻エイジは満20歳を迎えるのだから。


もう立派な成人の男。


「……エイジ」


…そして、私の恋人───


「なんです?」


机に向かい漫画の原稿を描き続けるエイジは、こちらに背中を向けた儘、返事だけ返してきた。


「青森の実家には連絡したの?」


「どうしてです?」


相変わらずカリカリと原稿を描き続けるエイジに私は小さな溜め息をつき、よいしょ、と仕事部屋の一角に置かれていたダンボール箱を抱えてエイジの隣に立った。


「これ、青森のお母さんからでしょ?…手縫いの新しい褞袍やら身の回りの生活用品やら…お手紙も入ってるじゃない。ちゃんと連絡しとかないと」


「今日はもう遅いですし明日にするです」


エイジの素っ気ない返事に私は、明日じゃ意味無いんだってば!と、つい大声をあげてしまった。


エイジは、そんな私に吃驚した様子でようやく原稿から顔を上げて私の方へと視線を向けてくれた。


「ど、どうしたです…?」


「……今日が何の日かエイジ忘れたの?」


私の問い掛けにエイジは目を細めて、一呼吸置いた後、僕の誕生日ですケド、と小さく答えた。


解ってるんじゃないか…。


「じゃあどうして今日、お母さんから荷物が届いたか解る?エイジの誕生日だからだよ?しかも…20歳の誕生日…」


…そうですケド、…だからどうしたとでも言わんばかりの素っ気ない返事を返すエイジ。


「…親にとって子供が成人を迎える誕生日ってとっても大事なのよ。一緒に祝えないなら尚更だよ…私も20歳になった時、親からそう言われたから…エイジのお母さんもきっと、うちの親と同じ気持ちだと思うよ?」


「……愛子……」


エイジは、持っていたGペンをコトンと机上に置いて、その手で近くにあった携帯を掴んだ。




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