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□お騒がせな二人
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「もーエイジのバカっ!知らないっ!」


「だからごめんって謝ってるじゃないですかっ!愛子がそんな分からず屋だったなんて知らなかったですっ!」





───原稿を取りに新妻くんの仕事部屋に訪れた僕は今、衝撃的な光景を目の当たりにしていた。


新妻くんと、その恋人である愛子さんがどうやら何かもめているらしい。


「ちょっ、ちょっとちょっと!二人とも何があったか知らないが取り敢えず落ち着いて…こんな夜遅くに近所迷惑だろう」


今にも食ってかかりそうな二人の間に入って僕は両手を広げて二人の喧嘩を制止した。


「雄二郎さんは黙ってて下さい!これは僕と愛子の問題ですから」


ふんふんと鼻息を荒くしてまくし立てる新妻くんの目は真っ赤に充血している…。こんなに憤りを露わにする新妻くんを見たのは亜城木くんがタントの連載を始めた時以来だな…。


亜城木くんにギャグ漫画を描かせてはダメだと言っていたあの時の新妻くんの険しい表情を古い記憶から思い返していると反対側から、愛子さんの甲高い怒号が飛んできた。


「分からず屋はどっちよ!エイジのバカっ!もうエイジなんか大っっっっ嫌い!さよならっ!」


「えっΣ!?ちょ、愛子さんっ!?」


彼女は僕の呼び掛けにも応じずに、すたすたと扉の方へ向かい、バタンッ!と勢いよく扉を閉めて仕事部屋を後にした。



なんだなんだぁ?υ
一体、何があったと言うんだυあんなにラブラブだった二人が…まさかこの儘───


「……新妻くん、いいのか?」


「いいんです!愛子も少し頭を冷やせばいいんです」


そう吐き捨てると新妻くんは椅子にどっかりと腰を下ろし、仕上がった原稿を乱暴気味に掴んで僕に差し出してきた。


「どーぞですお疲れ様です」


…ああυ、僕は原稿を受け取り新妻くんの様子を窺いながら尋ねてみた。


「…新妻くん…一体何があったんだ?そりゃ長い間付き合ってると、たまには意見の食い違いや気に入らない事もあるだろうが…まさかこの儘…その、別れるなんて…」


ピクンッ、一瞬だけ新妻くんの肩が揺れた。


「…愛子が別れたいなら仕方無いんじゃないですか」


新妻くんは机上のクロウのフィギュアを弄りながら、つっけんどんに応じてくる。しかし、その声は先程まで愛子さんと張り合っていた時のような威勢は無く弱々しいものだった。


…やっぱり後悔してるんじゃないか…。まったく……


「……さっき新妻くん言ってたよな?だから謝ってるじゃないですかって。新妻くんが謝ったと言う事は、つまり新妻くんに非があったんじゃないのか…?」


僕は優しく宥めるように問い掛けた。


僕の問い掛けに、新妻くんはゆっくりと振り返り、顔を上げて僕に視線を向けてきた。


その顔は段々と蒼ざめていき新妻くんの特徴の吊り眉毛は、への字に下がり…何とも情けない表情に変わると同時に新妻くんは、わぁっと叫びながら僕の腰にしがみついてきた。


「っなぁっ!?Σ///にっ新妻くんっ!」


「うわぁぁぁあん!ゆーじろーさーん!どうしましょー!愛子に大嫌いって言われちゃったですーっ!」


「ちょちょちょーっΣ解ったからっ、話なら聞くからっ、はっ鼻水がぁっ…V」


涙やら鼻水やらで顔をぐしゃぐしゃにして、わんわんと泣き叫ぶ新妻くんを僕はようやく腰から引き剥がし、取り敢えず落ち着くようにと宥めすかした。




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