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□はあとのおはなし
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6歳からペンを握っていた僕は、その後も来る日も来る日も、ずうっと漫画ばかり描いていて、そして15歳で漫画家デビューの夢を叶えました。


これからも僕は漫画を描き続け、漫画しか無い人生を生きていくのだと思っていたし別にそれに対して何の違和感もありませんでした。


そんな僕のそれなりに充実していた毎日に更に新たな風を運んで潤してくれたのは、僕の最愛の妻、愛子と…


6歳になる愛娘のアイミでした。




タッタッタッ……


僕は今、きりの良いところで仕事を切り上げ、ある場所へと全速力で走っていました。


「…はぁっ、早くしないとっ!愛子とアイミが帰って来ちゃうですっ!」


サンダルが脱ぎかけながらもようやく到着したのは一軒の花屋。


軒下には銀色のバケツに入ったたくさんの種類の切り花達が、キラキラと輝いています。


僕は花の種類なんてそんなに詳しく知りません…。定番のチューリップや薔薇もあれば見た事も無いような珍しい花まで、ずらりと並んであります。


「いらっしゃいませ。どのようなお花をお探しですか?」


キョロキョロと迷っている僕に気付いてか花屋の店員さんが話し掛けてきました。


「あ、あの、花束を作って欲しいです!花は何でもいいですっ!とにかくピンク色で統一して下さいです!」


ピンクは愛子の好きな色です。


すると店員さんはにっこりと微笑んで、予算はいかほどでしょう?、と訊いてきたので予算なんて考えていなかった僕は、



「いくらでもいーです!とにかくゴージャスでエクセレントな花束にして欲しいです!」



そう伝えると、畏まりました、と店員はヒョイヒョイと銀色のバケツの中から様々な種類のピンク色の花を選んで、あっと言う間に大きな花束を作ってくれました。


ライトグリーンの薄紙がピンク色の花々を際立たせ、大きなリボンは赤とゴールドがそれぞれ重なり合い、まさにゴージャスでした。


僕は代金を支払い、芳しい香りのする花束を大切に抱えて店を出ると、ちょうどその時────







「あーっパパちゃんだーっ!」


「!?」




背後から突然、聞き間違える筈の無い愛しい娘の声が聞こえ僕はゆっくりと振り返りました。


そこには幼稚園帰りのアイミと、その横には夕飯の材料の入った買い物袋を提げた愛子が並んで立っていました。


「エイジ…こんな所で何してるの?」


「わーっ!きれーっ///」


アイミは、すぐに僕の抱えていた大きな花束に気付きパタパタと可愛らしい足音をたてて近付いてきました。




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