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□離れないよ
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「……? 一緒に寝るだけだろ」
「マジか……」
意識、しないのだろうか。少なくとも自分はすると紡は思う。
「……何もしねえよ」
「えっ? ……わあっ!?」
ぐるんっ、と視界が反転し、ぼふんとベッドに倒れ込む。
「へっ……?」
「電気消す」
「えっ、あ、はいっ?」
一瞬の出来事に頭がついていかず、電気が消えて、そして傍らに温かなものが潜り込んできたところでようやっと紡は慌てだした。
「いや…いやいやいやどういうことコレ?」
「こういうことだ。寝ろ」
「ふわっ」
柔らかく抱きしめられて、そのままあやされるみたく背中を軽くたたかれる。恋人というより、子ども扱いされているようでこれはこれで複雑だ。
(…………でも……………安心する、かも)
心臓バクバクで眠れない、なんてことはなかった。寄り添う体温にただただ安堵して、自然と瞼が下りてくる。
「……おやすみ」
「ん……」
耳を擽る優しい声も心地良い。その声に誘われるまま、抗うことなく紡は意識を手放した。
(………寝たな)
すうすうと寝息をたてる紡の頭を撫でる。穏やかな顔に、焦凍はほっと息をついた。
「……寝不足、わかんねえと思ったか?」
柔らかな頬をつつきながらため息。本人はつとめて明るく振舞っていたが、焦凍からしてみれば、無理をしているのは明らかだった。
「どれだけお前のこと見てきたと思ってる」
いくら本人が前を向く気になっても、刻まれた恐怖はそう簡単に消えてくれないだろう。それを乗り越えるのは確かに紡自身だが、それを支えることくらいさせてほしい。
(俺が、守る)
額に1つキスをする。むにゃ、と身じろいだ紡が、ふにゃりと笑った。
「〜〜〜〜〜!」
(可愛すぎるだろ……)
ベッドの中、腕の中に恋人。
「何もしない」と言ったものの、これはなかなかくるものがある。
「んん………」
「!」
もにゅん、と当たる。何がとは言うまい。薄い寝間着越しの肌の感覚は、いつもよりも直接的だ。
「お、おいっ……」
暖を求めているのだろうか。紡の脚が、まるで抱き枕にでもするかのように絡んでくる。