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□それぞれの成長
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入ってきたのは、ブラドキング率いるB組。午後からは彼らがここを使うらしい。
「タイミング悪いなあ……」
しかし、こればかりは仕方ない。物間がまた劇団ひとりをやっていたが、もう慣れた。というか、彼の精神状態が心配だ。
それよりも、その中で出た仮免取得の話の方が重大だ。
(忘れてたわけじゃないけど)
仮免を取ろうと頑張っているのは、何も雄英生だけではない。他校の生徒と競い、そして、勝ち上がらなければならない。
しかも
「1年の時点で仮免を取るのは、全国でも少数派だ。つまり、君たちより訓練期間の長い者……未知の個性を持ち、洗練してきた者が集うワケだ」
「……!」
相澤の言葉に、改めて痛感する。
これは、明確な逆境だと。
(このままじゃ、駄目だ)
「……焦凍」
「?」
「お願いがあるの」
「ごめんね。付き合わせて」
「いや……。頼ってくれて嬉しい」
今日は休日。だが、学校に許可を取って借りたトレーニング室に紡と焦凍はいた。
「…頼るなら焦凍だと思って。それに、わたしの戦い方を一番知ってるのも焦凍だしね」
(……俺の嫁が今日も可愛い)
「このコスチューム……どれだけ機能するかも試したかったんだ」
「なるほどな。でもいいのか。俺に手の内晒して」
暗に、争うことになったらどうする、と問いかける。
「まあ、それはそれ。それにまだ見せてないのもたくさんあるしね」
「自信あるんだな」
「まさか。自信が無いからこんなことしてるの。……それに、もう二度と後悔したくないから」
「……そうか」
紡も、自分自身で女々しいと思うくらい、あの夜のことを悔いていた。けれど、過ちを犯してしまったものはもうどうしようもない。それならせめて、もう二度と、あんな思いをすることがないように。
「わたしのワガママ、付き合ってもらうね」
構える。見つめる先の焦凍は、僅か口の端を上げて笑った。
「そんなもん、ワガママでもなんでもねえよ」