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□第二の試験
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「爆豪くんよ」
「あ?」
思わず身構えたが、用があったのは勝己にらしい。彼に声をかけたのは、全身が体毛で覆われた特徴的な見た目の、おそらくは、上級生。
「肉倉……糸目の男が君のとこに来なかった?」
「ああ……ノした」
「やはり……! 色々無礼を働いたと思う。気を悪くしたろう。あれは自分の価値基準を押し付ける節があってね。何かと有名な君を見て暴走してしまった」
(『自分の価値基準を押し付ける』……ね)
先程のイナサとのやり取りを思い出し、紡はぐっと眉根を寄せる。
「雄英とは良い関係を築き上げていきたい。すまなかったね」
良い関係。士傑高校とならまだしも、あの夜嵐イナサという男とそうなれるとは、少なくとも、紡は思えなかった。思えなかったし、なりたくもなかった。
「それでは」
「おい坊主のやつ」
「!」
坊主の……イナサを呼び止めたのは、焦凍だった。
「俺、なんかしたか?」
「焦凍、ほっときなよ」
「いや、でもお前もなんか言われたんだろ」
「いいからっ…」
「………ほホゥ」
ギロ、とイナサが焦凍と、そして紡を睨みつけた。
「いやァ、申し訳ないっスけど……エンデヴァーの息子さん」
「……!」
「俺はあんたらが嫌いだ」
いきなり向けられた嫌悪に、焦凍が瞠目する。
「あの時よりいくらか雰囲気変わったみたいスけど、あんたの目は、エンデヴァーと同じっス」
「……!?」
「━━━━━━夜嵐イナサ」
「紡……?」
「さっきから……随分好き勝手言ってくれるよね」
「……」
「さっきの人、自分の価値基準を押し付けるとかどうとかで謝ってたけど、君が一番押し付け野郎だよ」
(ああ)
「端的に言うとさ……ウザイ」
(こいつが、嫌いだ)
「…………手遅れだったみたいっスね」
「は……?」
「エンデヴァーの息子なんかといるから、そんなんなっちまうんスよ」
「━━━━━━━━━━━━!!」
「夜嵐、どうした」
「何でもないっス!!」
くるりと背を向け去っていくイナサに、紡は嫌悪の視線を隠さない。