3

□第二の試験
2ページ/4ページ

「爆豪くんよ」

「あ?」

思わず身構えたが、用があったのは勝己にらしい。彼に声をかけたのは、全身が体毛で覆われた特徴的な見た目の、おそらくは、上級生。

「肉倉……糸目の男が君のとこに来なかった?」

「ああ……ノした」

「やはり……! 色々無礼を働いたと思う。気を悪くしたろう。あれは自分の価値基準を押し付ける節があってね。何かと有名な君を見て暴走してしまった」

(『自分の価値基準を押し付ける』……ね)

先程のイナサとのやり取りを思い出し、紡はぐっと眉根を寄せる。

「雄英とは良い関係を築き上げていきたい。すまなかったね」

良い関係。士傑高校とならまだしも、あの夜嵐イナサという男とそうなれるとは、少なくとも、紡は思えなかった。思えなかったし、なりたくもなかった。

「それでは」

「おい坊主のやつ」

「!」

坊主の……イナサを呼び止めたのは、焦凍だった。

「俺、なんかしたか?」

「焦凍、ほっときなよ」

「いや、でもお前もなんか言われたんだろ」

「いいからっ…」



「………ほホゥ」



ギロ、とイナサが焦凍と、そして紡を睨みつけた。

「いやァ、申し訳ないっスけど……エンデヴァーの息子さん」

「……!」

「俺はあんたらが嫌いだ」

いきなり向けられた嫌悪に、焦凍が瞠目する。

「あの時よりいくらか雰囲気変わったみたいスけど、あんたの目は、エンデヴァーと同じっス

「……!?」

「━━━━━━夜嵐イナサ」

「紡……?」

「さっきから……随分好き勝手言ってくれるよね」

「……」

「さっきの人、自分の価値基準を押し付けるとかどうとかで謝ってたけど、君が一番押し付け野郎だよ」

(ああ)

「端的に言うとさ……ウザイ」

(こいつが、嫌いだ)

「…………手遅れだったみたいっスね」

「は……?」

「エンデヴァーの息子なんかといるから、そんなんなっちまうんスよ」

「━━━━━━━━━━━━!!」



「夜嵐、どうした」



「何でもないっス!!」

くるりと背を向け去っていくイナサに、紡は嫌悪の視線を隠さない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ