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□寮へ
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「お母さん……正直ね、反対なの」
「……………」
涙を流しながら言う母に、紡はぎゅっと拳を握りしめた。
「今回は無事に戻ってきてくれたけど……! でも、でもね、怖いの。もしまたこんなことがあったら……? ないって言えるっ……?」
「お母さん……」
雄英高校から届いた、全寮制導入の案内。紡奪還からさほどたたずに届いた一枚の紙が、紡の両親にこの上なく重い決断を迫っていた。
「雄英が嫌いなわけじゃないのよ。でも……でも、信じきれなくなってるのも、事実なの」
「あれは、わたしが判断を間違って……!」
「生徒に判断を委ねなきゃいけない状況にまで追い込まれること自体、おかしいわ……」
「っ……」
「だから、だからね……本当はお母さん、雄英、やめてほしいって……思っちゃったの」
「!? それはっ……!」
思わず椅子から立ち上がる。しかし母の泣き顔に、何も言えなくなってしまった。
「………紡、座りなさい」
「お父さん……」
それまで黙っていた父が、静かに口を開いた。いつもの明るい雰囲気はなりを潜め、真剣な面持ちで紡を見ている。
「………紡。お母さんの気持ちはわかるな」
「うん……」
「俺も、お前が攫われた時、本当にどうにかなりそうだった……身内だからと捜査からも外されたしな」
「っ……」
「USJ事件から始まって、今回のこれだ。その上離れて暮らさないといけないなんて……正直、怒りすら覚えた」
ふう、と深く息をつく姿は、自分自身を抑えつけているかのようだった。
「……紡、お前は心からヒーローになりたいと思うか」
「え……?」
「お前はヒーロー向きの個性だったし、頭も良かった。だから俺達も、周りも、当たり前みたくお前は将来ヒーローになるんだよなって言ってきた。もしかしたら、知らない内にお前の夢を、俺達が決めていたんじゃないかって思ってな……もしも、そうなら、」
「━━━━━━そんなことない!!!」
思わず、大きな声が出た。
「………っ、あ、ご、ごめんなさいっ…………」
「いや、いい。……続けなさい」