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□離れないよ
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「……はあ」
ベッドに腰掛け、ため息をつく。
「どうして……」
「?」
「焦凍がここにいるのかなあ?」
首を傾げて問いかけるのは何度目か。そして、当たり前のように返されるのも何度目か。
「泊まるから」
隣に座り、さも当然という顔の焦凍に紡が口元をひくつかせる。
「だからっ! それは流石にまずいでしょ!」
「バレなきゃいい」
「いつからそんな悪い子にっ!」
既に泊まる気まんまんの焦凍に、紡はわなわなと震えている。こんなことがバレた日には、恥ずかしいどころではない。入寮初日に女子部屋に男子が宿泊。謹慎、悪ければ除籍だってありえるのではないか。
「………今日だけ」
「っ……」
しかし、この目である。
「迷惑かけねえから……」
「わ、わざとやってる……でしょ」
「………?」
「きょとんってしないで! ああもう……」
(天然なの演技なの!? 未だにわからない!!)
「…………」
ぎゅううっ
「〜〜〜〜〜〜!」
(これ、わざとじゃないなら恐ろしい…!)
どちらにしろ、タチが悪いことに変わりないが。
「いいだろ……?」
「!!」
すり、と頬をすり寄せてくる。猫のような仕草だが、自分が猫ではなくてイケメンなのを自覚して欲しい。
「紡……」
「いやちょ、ちょっと離れて!」
「あまり大声出すと蛙吹にバレるぞ」
「誰のせいだとっ……」
「?」
「………」
毒気を抜かれる、きょとん顔。
「わかった。うん。……今日だけだからね」
「……!」
ぱあっ、と焦凍の顔が明るくなる。背も高いし実は割と体格もいいのに、まるで子犬のような反応だ。
(ヤバい。ほんとにわたし甘くなってる……)
これではどんどん歯止めがきかなくなってしまうのではないか。それは、流石に不味くはないか。
「何やってんだ。寝るぞ」
「うわあマイペース」
「つめてくれ」
「……へ?」
(いやいやいやいや……)
「わたしソファで寝るから、ベッド使って」
「一緒に寝ればいいだろ」
「……………焦凍、何言ってるかわかってる?」
百歩譲って、そこは「俺がソファで寝る」ではないのか。