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□編め必殺技
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(これからいよいよ仮免取得か……)

仮免許。これを取得すると、緊急時に限りヒーローと同等の権限を行使できるようになる。そしてもちろん、プロヒーローとなるために外せない、大目標。

「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然取得の為の試験はとても厳しい」

相澤の言葉に、教室にどこか緊張感のある空気が流れる。

「仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」

(仮免で、5割……)

その数字が、どれだけヒーローという職務が厳しいものなのかを表している。ヒーロー飽和社会と揶揄されているが、誰でも彼でもその職につけるわけではないのだ。

「そこで今日から、君らには1人最低でも1つ……必殺技を作ってもらう!!」

ガラッ! と教室のドアが開き、エクトプラズム、セメントス、ミッドナイトが登場。「必殺技」というそれだけで期待感を煽る言葉に、クラス中が盛り上がった。

「必殺! コレ、スナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴する! 今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

(ミッドナイト先生だけなんかポーズとってる……!)

相変わらず際どい。
まあそんな話は置いておいて、コスチュームに着替え、体育館γに集合となった。ちなみに、この体育館γ、通称は

「トレーニングの(T)台所(D)ランド(L)……略してT○L!」

(((((TD○はマズそうだ!)))))

とにかくここで、それぞれの必殺技を考案するらしい。仮免では情報力や判断力、機動力など、幅広い能力が問われるが、中でも極めて重視されるのが戦闘力。それ故、技の有無は合否に大きく影響する。

そして、中断されてしまったが、合宿での「個性伸ばし」は必殺技を作るためのプロセスだったのだ。つまり、残り10日あまりの夏休みは、休みとは名ばかりの圧縮訓練期間となる。

「必殺技……!」

「何か考えてあるのか」

「うん! 焦凍は?」

「俺は……まあ、まずは同時発動に慣れるところから始めようと思う」

「そっか。頑張ろうね!」

「おう」

優しく頭を撫でてくれる手に、紡は恥ずかしそうにしながらもそれを払うことは無かった。
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