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□一次試験と嵐の男
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1540人を一気に100名まで減らす試験……その内容は、至ってシンプルだった。
「動く的当てってとこか」
「うん。でも相手は人だからね。単純にはいかなそう」
受験者は各自体の3箇所にターゲットをつける。狙うは他の受験者のターゲット。そこに専用のボールを当てる。脱落条件は、ターゲット3箇所とも当てられること。勝ち抜き条件は、他受験者2人を倒すこと。ちなみに、3つ目のターゲットにボールを当てた人が「倒した」とされる。
「えー……じゃ展開後ターゲットとボール配るんで全員に行き渡ってから1分後にスタートとします」
「「展開?」」
目良の奇妙な言葉に、紡と焦凍はそろって首を傾げる。そのとき、ぎぎ……と、天井が鳴いた。
「えっ……!?」
天井だけではない。四方の壁も軋んだ音をたてる。そして、「隙間から陽光が入ってきた」。
「て、展開ってこういうこと……!?」
会場の建物、それ自体が数学の展開図のように見事に開いていた。
「ムダに大掛かりだな」
「う、うん……。ていうか、フィールドも凄い……」
ビル群が並ぶフィールドもあれば、山岳や工場地帯、水辺のフィールドもある。それぞれ得意な分野で戦えということなのだろう。
「先着で合格なら…同校で潰し合いは無い…むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋…! 皆! あまり離れず一かたまりで動こう!」
出久の言うことは正しい。これは個人戦のルールに見えて、その実は学校単位の団体戦だ。そして雄英高校は唯一、体育祭というイベントで個性が他校に知られている。弱点もまた然り。ならば真っ先に狙われるのも道理。単独行動は得策とは言えないが……。
「フザけろ。遠足じゃねえんだよ」
「バッカ待て待て!」
出久に従うはずもなく、勝己は一人走り出す。切島、そして上鳴もそれを追いかけ言ってしまった。
「俺も。大所帯じゃ却ってチカラが発揮出来ねえ」
「轟くん!!」
「ごめんねいずっくん。わたしも作戦があるから!」
「え、ちょ、語部さん!?」
呼び止める出久には申し訳ないが、アレを試すいい機会だ。それに、万が一皆を巻き込んでは行けない。
「いいのか。緑谷たちと一緒じゃなくて」
「うん。アレをやってみたい。わたしは工場地帯に行くよ。焦凍は?」
「俺もだ」
「んじゃ一緒に行こっか!」
「おう」