失声少女
□失声少女01
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「……まさかこんな大企業グループが敵と繋がってたなんてな」
「うん。しかも自宅で取引なんて大胆すぎる……どうして今まで気づかれなかったんだろう」
「何かありそうだが……どう思う緑谷」
「今はデクだよ。……ってショート! 合図だ!」
「おう」
合図に従い、取引現場を抑え込む。警戒していたがなんてことはない、三下の集まりだった。
(なんだ……簡単すぎる……)
「他に仲間がいないか探すぞ」
「ならウチに任せて」
そして耳郎はすぐに見つけた。
この地下にいる、もう1人の存在を。
「え……?」
「どうした?」
「いや、1人いるはいる……けど、これ、子ども…………?」
「えっ、ほんと!?」
「場所はどこだ」
「こっち!」
一見なんの変哲もない本棚の後ろ、そこに、隠し扉がある。それを開けると、暗く、長く続く階段。
「いくよ」
「ああ」
勢いよくドアを開ける。そこに、敵の姿はない。
その代わり。
「っ……………」
縮こまって、こちらを見つめる2つの目。
(………ほんとに、子どもだ)
4、5歳くらいか……。薄暗い部屋の質素なベッドの上で。そしてその足首に、嵌られたそれを見た時、思わず駆け寄っていた。
「おいっ。これどうしたんだ」
「っ……っ……」
折れちまいそうなくらい細い足首に、無骨な足枷。
「デク、これ外せるか」
「あ、うん!」
ばきゃんっ、と音を立てて緑谷が鎖を引きちぎる。子どもはびっくりした顔でそれを見て、それでも、声は出ない。
「誘拐でもされたのか? 名前はなんていう?」
「………………?」
未だに震えながら、何故かそいつは戸惑った顔をした。混乱しているのか?
「名前だ。俺はショート。お前は?」
「…………」
ふるふる、と首を横にふる子ども。
「ショート、もしかしてこの子……」
「なんだ」
「名前ない、とか?」
「……………」
こくんと、そいつは頷いた。
これが、俺とこいつ………果敢無の、なんとも歪な出会いだった。