失声少女

□失声少女01
1ページ/6ページ

「……まさかこんな大企業グループが敵と繋がってたなんてな」

「うん。しかも自宅で取引なんて大胆すぎる……どうして今まで気づかれなかったんだろう」

「何かありそうだが……どう思う緑谷」

「今はデクだよ。……ってショート! 合図だ!」

「おう」

合図に従い、取引現場を抑え込む。警戒していたがなんてことはない、三下の集まりだった。

(なんだ……簡単すぎる……)

「他に仲間がいないか探すぞ」

「ならウチに任せて」

そして耳郎はすぐに見つけた。
この地下にいる、もう1人の存在を。

「え……?」

「どうした?」

「いや、1人いるはいる……けど、これ、子ども…………?」

「えっ、ほんと!?」

「場所はどこだ」

「こっち!」

一見なんの変哲もない本棚の後ろ、そこに、隠し扉がある。それを開けると、暗く、長く続く階段。

「いくよ」

「ああ」

勢いよくドアを開ける。そこに、敵の姿はない。

その代わり。

「っ……………」

縮こまって、こちらを見つめる2つの目。

(………ほんとに、子どもだ)

4、5歳くらいか……。薄暗い部屋の質素なベッドの上で。そしてその足首に、嵌られたそれを見た時、思わず駆け寄っていた。

「おいっ。これどうしたんだ」

「っ……っ……」

折れちまいそうなくらい細い足首に、無骨な足枷。

「デク、これ外せるか」

「あ、うん!」

ばきゃんっ、と音を立てて緑谷が鎖を引きちぎる。子どもはびっくりした顔でそれを見て、それでも、声は出ない。

「誘拐でもされたのか? 名前はなんていう?」

「………………?」

未だに震えながら、何故かそいつは戸惑った顔をした。混乱しているのか?

「名前だ。俺はショート。お前は?」

「…………」

ふるふる、と首を横にふる子ども。

「ショート、もしかしてこの子……」

「なんだ」

「名前ない、とか?」

「……………」

こくんと、そいつは頷いた。

これが、俺とこいつ………果敢無の、なんとも歪な出会いだった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ