駄文(妄想ver)

□セイレーン可愛いよセイレーン
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(予め、前のページに戻って
作者が意図したであろう人物の名前を
設定しておくと一層楽しめます。)



どこまでも愴溟な海の上に、
滑るような地平線と、銀屑が散った空とが
あるんだ。そして銀屑に満ちた空に、
青い光を湛えた月がぽつん、と
ただ一人きりあるんだよね。


海から続く、水の静かな入り江の洞窟でさ、
セイレーンがやすらかに眠っているんだよ。
白くて清らかなセイレーンさん。

入り江からの冷たい水が、
セイレーンさんのまぶたを、そっと
撫でるんだ。それで
僅かに蠢いた睫毛から………
ぽろぽろと、真珠の涙が
伝い落ちるんだ………

僅かな温度をもったそれは、
冷たい水に入って
柔らかな海藻の上で一休みをするんだ。
そして、射しこんだ青い月光を
受けて、ほのかな
哀しみの香りをたたせながら、
セイレーンさんを
また、眠りの中に引き込むんだ。


安らかな寝息に合わせて、
セイレーンさんの白い身体は、
浮かぶように、沈むように眠っている。

セイレーンさんは指先にいたるまで
真っ白で、ややもすると、
血の気がないようにも見える。
そう見えるのは、洞窟の入り口から
射し込む、透き通った月の光が
肌の白さを際立たせているからなんだ。


美しいセイレーンの、白く
なめらかな首筋に、細い海草が絡む。
セイレーンさんはそれに縋るように、
すうと海草を白い指先で包みこむ。
船に乗って原稿を取りにやってくる男達の、
ちっぽけな命を簡単に奪う
その指であるけれども。
この時ばかりは儚く、そして
消え入りそうにも見えるんだ……。

遠くの、やっぱり青くて冷たい海から、
子守唄か、さざ波か、どちらとも
つかないのどかな調べ。
その唄は、セイレーンさんの眠りを、
静かに、静かに癒すんだ………。
 

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