駄文(妄想ver)

□アテナ可愛いよビーナス
1ページ/1ページ

わたしは、ビーナスさんの妻だ。
知っての通り、
ビーナスさんはミステリ作家。
毎日急がしそうにしていたり、
そうかと思えば執筆室に
閉じこもっていたり、
……徹夜でTwitterをしていたり、たまに
原稿を破いたり、小説そっちのけで
ゲームのシステム?について
一人でぶつぶつ語っていたりする。

ビーナスさんはそんなふうに
ちょっと、奇行が目立つこともある。
けど、きっとお仕事のために必要なこと
なんだろうから、わたしは
特に何も言わないことにしている。
間違って、ないよね!


でも――ビーナスさんが
仕事やTwitter、奇行に
夢中になっている時、
わたしが何をしているのか。
……ビーナスさんは知らない。

もちろん、何をしてるか
悟られてはならない。



――諜報機関『NEKO』は秘密を知った者を
生きて帰さないことが掟だから。
わたしは、ミステリ作家ビーナスの
妻であると同時に、『NEKO』の一員だ。



ビーナスさんは、わたしに優しい。
世の中には不幸な結婚をしたと
感じる人が山ほど居るらしいが、
わたしはこれまで一度も、
結婚を後悔したことなんて無かった。
…いや、あったかな、
味噌汁の具になめこを入れる人だとは、
思わなかったんよ。
今でも、正直それはありえないと思う。

まあそれでも…幸せな結婚だったと感じる。
ビーナスさんは面白い人だし、
何よりもわたしを大切に思ってくれる。
わたしも…ビーナスさんを
大切に、思ってる。
お金が無かった時も、お金ができはじめて
きてからも、忙しくなってからも。
――そして、今も。

ずっと想いが通い合ってると
確信を持って言える結婚を、わたしはした。


でもこの幸せな結婚も、
組織のためだって知ったら……
ビーナスさん、怒っちゃうかな?
怒らない……かな。


ビーナスさんはよく人から
怒りっぽいと言われている。
わたしもそう思うし、本人も
認めている。でも、私には絶対怒らない。

あおいちゃんの番組、録り損ねちゃった
時だって、ビーナスさんは怒らなかったし
スキー中、うっかり激突しちゃった
時も、凄く痛そうだったのに
ぜんぜん怒らなかった。
だからきっと、怒るんじゃなくて
……泣いちゃう、と思う。
ああでも、泣くよりも先に
冗談だと思って笑うかも?
ひとしきり笑って、わたしの表情を見て
だんだん本当のことだと理解して…
それでやっと……泣いちゃうんだと思う。


泣いて、自分を見つめる夫の顔を
思い浮かべた。
あんまり楽しくない想像だった。
震えたビーナスさんの声、
冷たい居間の光、重い夜の空気、
明るいのはテレビの音声だけ……

楽しくないのに、一旦考えはじめると
もう止まらない。次から次へと
嫌な想像が頭を駆けた。
わたしの想像は、組織の人間がやってきて、
ビーナスさんを殺してしまうまで……!
ずっとずっと止むことが無かった。
わたしは拳をぎゅっと握って
嫌な想像に耐えた。

――散々考えてきたことなのに、
どうしていつもこんなに苦しいんだろう?
想像の中のビーナスさんが
凶弾に倒れる。
熱い返り血が、頬に流れた気がした。


それでもビーナスさんは……
最後まで…わたしのことを
怒らないだろうな。


「アテナ、また何か考えてるのか?
ったく、お前と組んでから何年も経つが
未だに意味わかんねえよ、それ。」
わたしの膝の上にふわふわとした
生き物が乗る。ぷちだ。
ビーナスさんや他の人には
猫ということで通してあるが、
彼も立派な組織の一員だ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ