駄文(妄想ver)

□ビーナス可愛いよアテナ
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ビーナス氏は新聞のはじを
ちぎり、丸めた。そして
それを口にくわえ、台所から
ライターを持ってきた。
アテナは不思議そうに
ぽーっと見つめていたが、
彼がそれに火をつけようとするに
及んで慌ててとめた。
「やめてビーナスさん!
やけどしたら危ないよ!」

「ほんまに、どうしたのん。
また、頭のおかしな人の小説
書いとるん……?心配やわ…」
妻は涙を浮かべてビーナス氏の
手をとった。タバコが吸いたくて
たまらないこんな時でも
妻は反則的に可愛らしかった。
「アテナ、本当にお前、
タバコ忘れはったのか……?」
「聞いたこともないわ。
新しいトリック?それとも
お友達に教わった手品…?」
涙の粒がほろりとビーナス氏の
手の中に落ちた。
「い、い、いや、知らんの
やったらええわ。ごめん…。」
ビーナス氏は妻の柔らかな手と、
涙のぬくもりを感じながら
少し混乱しつつ、口をつぐんだ。

……どうにもよくわからん。

アテナにはとても
悪いことをしてしまったが…
(可愛らしかったが…)
どうしてアテナはタバコを
忘れてしまったのだろう?

稀代の天才ミステリ作家と呼ばれる
彼であったが、理由がまったく
思い浮かばない。
タバコでも吸って気を落ち着けて
よく考えてみたかったものだが
いまやそのタバコが無いのだ…。


彼はサンダルをつっかけて、
庭に降りた。ときどき吸殻を
庭に投げ捨てていたことを
思い出したのだ。それを探し出し、
とりあえず吸うことにしよう。

なにもタバコを吸うのにそこまで…
と思うかもしれないが、
全共闘時代に生まれた人間は
なにごとも全力で尽くすと
決まっているのだ。
(引用…某Twitterアカウント)
そういうものなのだ。


だが、かがみこみ、
くまなく歩き回っても吸殻を
見つけることはできなかった。
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