memorialブック
□ママとパパ!!
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「…ナー!早く起きないと先に行くわよー」
「う…ん…」
壁側に向いていた体を動かして寝返りをうつと、真っ暗だった瞼の裏が急に明るくなった。
眩しいのに驚いて咄嗟に布団を被る。
いつもなら声をかけられると自然に目が覚めてくるのに、今日はなんだかまだ眠い。
ママの声に気付かなかったフリをして、また眠りにつこうとした時、ママは小さな声で呟いた。
「…今日パパ帰って来るのになぁー…」
…。
「ルナが眠いんなら仕方ないか…。じゃあママはギルドに行ってパパの帰りを待っ…」
「あたしも行くー!!!!」
あたしは布団から飛び起きた。
そうだった。
あたしは昨日、ミラお姉ちゃんからパパが帰って来るって聞いて、嬉しくて眠れなかったんだ。
今は微塵も残っていない、さっきまでの眠気の理由がわかってスッキリした。
が、あることを思い出し、洗面所に駆けていく。
鏡に映る自分を見て青ざめた。
今さっき起きたから当たり前なのだろうが、パパと同じピンク色の髪には寝癖がついていて、格好はパジャマのままだったのだ。
急いでキッチンに駆けていくと、テーブルの上には朝ご飯が用意してあった。
マナー違反だとは思ったけど、大口を開けてご飯を口に詰め込んだ。
いつもは怒るママも、今日はくすくす笑うばかりで注意してくることはなかった。
やっとのことで全部食べ終わり、自分の部屋のクローゼットを開け放す。
ママみたいな服はまだ着れないけれど、あたしなりに一番可愛いと思った服を選んだ。
鏡の前に立って一回転すると、やっぱりぴょんぴょんと跳ねる寝癖が目についてしまう。
撫でてみても直りそうにない。
こうゆうときはあの人を呼ぶしかいない。
「ママ!キャンサー喚んで!」
「はいはい。開け、巨魁級の扉!!」
「今日はどんな髪型にするんだ?エビ」
「とりあえず可愛く!!」
「わかった。エビ」
キャンサーはあっという間に寝癖を直して可愛い髪型にしてくれた。
「うんっ可愛い!!ありがとうキャンサー!」
あたしは家を飛び出して、ギルドに向かって走りだした。