memorialブック

□太陽
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ザー…

「…?っ!…やば、もうこんな時間か…」

本が見にくくなったことに疑問を感じて顔を上げると、部活をしていた生徒達の声は消え、外が暗くなっていたことに気がついた。
時計を見ると7時40分。
部員がみんな帰ったことには気付いていたが、文芸部の部室で本を読んでいたあたしは周りの変化に気付かなかったのだ。
こんな時間なら靴箱や校門の鍵は閉められているかもしれない。
こういうときは職員室に行って、先生に謝って…
これから人と話すことを考えると、急に体が重くなってくる。
今日はなんとなく、もう人と話したくない。
まずは靴を取りに行こうと思って、荷物を持って階段を一段ずつゆっくりと下りていった。

…下りていくにつれて、人の話声が聞こえてきた。
先生の声と生徒の声。
自分以外の生徒が残っていたことに驚いて、目を丸くしながらも階段を下り続ける。

靴箱にたどり着いたとき、その生徒の顔と声が、見知った人物のものであったことに気がついた。
そして、それに気がつかないほど疲れていた自分にも驚いた。

あたしに気付いた彼は、あたしにいつもの曇りのない明るい笑顔を向けてきて。

「よう!ルーシィ。お前こんな時間まで何やってたんだ?」

「な、何って…」

「うわっなんだ、ルーシィまでまだ学校にいたのか」

先生はあたしを見るなり手で半分顔を覆って溜め息をついた。
無意識に乾いた笑いが漏れる。

「ルーシィ、ナツなんかに合わせなくていいんだぞ?」

頭の中にハテナが浮かぶ。

「いや、ナツは関係ありま…」

「はいはいスイマセンでしたー。あっそうだルーシィ、俺傘忘れたから一緒に帰ろうぜ!」

言葉を遮られたことに少し驚きながらも、ナツに言葉を返す。

「…それは暗にあたしの傘にナツも入るからよろしくなってこと?」

「おう!…って傘忘れたっつってんのに入らないわけないだろー。…はっ!!もしかして入れる気なかったのか!?お前…残忍なやつだな…」

「なんでそうなんの!?ダメとは言ってないでしょ!?」

「じゃあいいんだな!」

「あっ…。…もう、仕方ないわね」

「…おい。どうでもいいが教師の前でイチャイチャすんのは…」

「「イチャイチャしてません(ねえ)!!」」

「そ、そうか。じゃあ早く帰るんだぞ!」

先生に見送られ、あたしたちは学校を後にした。
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