shortブック
□本当の
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なんでかわかんねぇけど、この頃ルーシィにイライラする。
ギルドに入って、ルーシィを見つけて向かいの席に座った。
そして、静かに読書をしているルーシィの顔をじっと見る。
いつも怒って泣いて笑って百面相する姿とは違い、今は…
一言で言えばきれい。
それがぴったりだ。
そんな姿をぼーっと見ていると、こちらに気付いたのか、本に詩織を挟んで顔を上げた。
それでも尚眺めていると、突然後ろを振り返ったかと思ったら、にやにやと嫌な笑みを浮かべながら視線を合わせてきた。
まただ…。
「なぁ〜に〜?ナツくんは誰を見ていたのかなぁ〜??」
「は?」
ルーシィはチラチラと後ろを見ている。
気になって、俺も同じ所を見る。
ルーシィの先にはクエストボードがあって、そこには依頼を選んでいるリサーナがいた。
リサーナ?
わけがわからなくて首を傾けると、ルーシィがくすくす笑い出した。
「またまたぁ〜。誤魔化すの下手よね、あんた。もうみんな知ってるんだから、恥ずかしがらなくったっていいじゃない。」
可愛いなぁーと呟くルーシィ。
本当にわけがわからない。
何を知ってるってんだ?
俺はルーシィを見ていただけ…
あっそうか。
「俺がルーシィ見てたってことか?」
言った途端に、ルーシィは冷たい視線を向けてきた。
「あんたね…。照れ隠しにしても、もっとマシな嘘つきなさいよ。リサーナに聞かれたら、あんたたちが気まずくなるだけなのよ。」
なんでリサーナが出てくるんだ。
毎回リサーナがリサーナがって…。
今俺が話してんのはルーシィで。
黙ってルーシィを見ていると、溜め息をはかれた。
そして、元の明るい雰囲気になったルーシィはにこりと笑った。
「わかったのならいいわ。あんたはもう少し『乙女心』をわかんなさい。2人とも鈍感すぎて、見てるこっちがハラハラするんだから。」
そう言うと席を立ち、リサーナのところに真っ直ぐ歩いていった。
リサーナに笑顔で話しかけたルーシィは、俺を指差して何か言ったかと思うと、にやにやと俺にも向けた笑みを浮かべ、最後には溜め息をついてしまった。
短い会話だったのに、表情をころころと変えるルーシィが面白くて、自然に頬が緩んだ。
それを慌ててマフラーで隠しながら、ルーシィが戻ってくるのを待つ。
しかし、ルーシィはそのままカウンターの自分の特等席に座って、ミラと話し始めてしまった。
代わりにきたのはリサーナで。
「ナツ、仕事いかない?」
「はぁ??」
突然の誘いに驚く。
「さっきルーシィにさ、『今月の家賃確保したからもう仕事には行かないって言ってるのに、ナツってばしつこいの。リサーナ代わりに一緒に行ってあげてくれない?』って頼まれちゃったんだ。ナツ、ルーシィにあんまり迷惑かけちゃダメだよ?」
思わず固まる。
確かにこの頃ルーシィの様子がおかしくて、元気づけようと思って何回も誘った。
それが『迷惑』…。
何かが、自分の中で崩れる音がした。
のと同時に、胸の中に小さな赤黒い炎が灯った。
「わかった。早くその仕事行こうぜ」