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□カジノ
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「ほらっナツ、はやく行くわよ」

「うぷっ…待てってルーシィ…」

列車で酔ってしまったナツを引きずりながら歩いていた。
いつもなら背中におぶって…
…なぜいつもそうしているのかはわからない。
ハッピーとグレイとエルザのせいだ。

「…ルーシィ、今日はいつにもましてひどいね」

「そう?あんまり変わらないと思うけど」

そう言って、余裕のない足取りで目的地を目指す。

…こんな態度をとってしまうのは仕方がないと思っていた。
なんたって、この仕事にはあたしの家賃がかかっている。
2日後までに支払わなければあの家を追い出されてしまうのだ。
とりあえず今は緊急事態なのであって。

ハッピーは素っ気ないあたしの態度に溜め息をついた。
そして、まるでしょうがない、とでも言うかのようにナツを持ち上げた。

「あらハッピー、持ってくれるの?」

「そんな『荷物持ってくれるの?』みたいに言わないでよ…。ナツがかわいそう…」

「…じゃあこれからナツを運ぶのはハッピーの担当ね」

頬を膨らませ、口を尖らせる。
…まぁ、さっきの言葉はひどかったかもしれないけど。
今は全然謝る気になれない。

ハッピーはまた溜め息を漏らした。

「…ナツはルーシィの担当だよ。だけど今のルーシィにナツは任せられない。」

眉がぴくりと動く。

「…どうゆう意味よ」

「金の亡者…うぷっ」

「そうゆうことだよ」

「…そうさせたのは誰かしらぁ〜?」

笑顔で一人と一匹を見る。
すると、酔っていたはずの一人と、溜め息をついていた一匹は目に見えて震え始めた。

「お、オイラ達先に行ってるねー!!」

ナツを抱えたままMAXスピードで飛んでいくハッピーを見送って、ほっと胸をなで下ろす。

一瞬何とも言えない不安が胸をよぎった。
『金の亡者』
嫌な響き。
あたしがこんな冷酷になっているのは家賃のため。

無理矢理頭からその言葉を消し去って、ナツとハッピーの後を追った。
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