まだ俺が忍に成り立ての頃
一人の女の子が森の中で迷っていた
声をかけようか迷い、木の上から見ていると女の子は泣き出していた
何故か助けてあげたくなり木から降りて声をかけてあげた
すると女の子は安心したのか涙をふきにっこり笑い俺の名前を聞いてきた
「佐助。猿飛佐助」
『佐助!覚えた!あのね、私の名前は小春!お父さんとここにきたの。それでね動いちゃだめだよって言ってお父さんがいなくなっちゃったの』
あぁこの子は捨てられたのか
可哀想だけど俺にはどうすることも出来ない
だって俺は主に仕えるただの忍
けれど何故かこの子を見捨てられない俺もいた
こんな感情は教わってないからわからない
『………ほんとうは知ってるの。私すてられちゃったんでしょ?泣いたらお父さんむかえに来てくれるとおもったのでも…』
もう泣かない。
だってもうむかえに来てくれないとわかったから
気がついたら俺は女の子…小春を抱きしめてた
小春を一人にしたくないそう思った
「俺がずっと側にいるから。だから……………」
『お早う佐助』
「お早う……夢を見た。初めて小春に出会った時の夢…」
縁側で小春の膝枕で寝ていた俺は小春の頬に手を添えながら答えた
懐かしい、君との出会い
「あの時小春に出会えて良かった」
『私もだよ?あの時佐助が御館様や幸村くんに私の事を頼んでくれたから今こうして私がいるんだよ』
あの時と変わらない笑顔を俺に向けてくれる小春はとても輝いて見えた
「それじゃあ仕事に行って来ますか」
『気をつけてね?怪我なんてして帰ってきたら怒るから』
「はいはい肝に命じますよ〜っと」
佐助。
名前を呼ばれて振り向くと俺の手を優しく包みこむように握って微笑んでくれる
『私は佐助が好き。猿飛佐助と言う一人の人が好き…だから早く帰って来てね?』
「うん。俺様も…俺も小春が好きだよ行ってきます」
《俺がずっと側にいるから…だから》
俺をちゃんと見てて欲しい
猿飛佐助って人を見てて
そう言ったら小春はきょとんとした顔をした後すぐにあの笑顔で言ってくれたっけ…
《えっと…佐助は佐助だよ?》
俺はその言葉一つで救われたしずっと君を守っていきたいと思ったんだ
今ならわかるよ
これが恋と言う感情
愛しいと言う感情
この感情をくれた君に、そう一言で言うなら
ありがとう
2013,9