□手招きは逢瀬の合図―笑った鬼が誘う夜
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屯所での稽古中、視線を感じてそちらを見れば視線の主と目があった。

視線の主は銜え煙草の土方さんで、山のような書類を手に此方を見ていた。

俺のかかり稽古の順番はまだ回ってこないから、
仕事サボってんじゃねーよって口パクで言ったらテメェにだけは言われたくないって返ってきて。

また何か言おうとしたら稽古の順番が回ってきてしまった。

近藤さんが相手だから仕方なく稽古に戻りつつもう一度土方さんに視線を戻したら土方さんが左手をあげた。

それは二人だけに通じる秘密の合図。

俺は周りにばれないように土方さんに合図を送り返して稽古に専念した。

「おいっ!総悟っ!てめっ!今夜俺の部屋に来いって言っただろーがー!」

夜、夜着に着替えて部屋でくつろいでいた俺のところに怒鳴りながら土方さんがやってきた。

土方さんはすぱーんッと襖を勢いよく開けるなりどかどかと部屋に押し入ってきて、
寝ている俺を睨むように見下ろしてくる。

「うっせぇなぁ。今何時だと思ってんで?」

寝ころんだまま面倒くさそうに土方さんを見上げればひくりと土方さんの頬がつる。

こんな顔日常茶飯事だし別に怖くもない。
というよりそれ以前に

「俺アンタに拒否の合図返しやしたよね?」

行かないって言ったんだから来るんじゃねぇよ。

ふいっと視線を逸らして文句たれたらグイッと胸倉をつかまれた。

「行かないじゃねぇんだよ。だいたいお前が起こした不祥事について何だからそもそもお前に拒否権なんざねぇんだよ!」

「えー!!だってアンタの説教長いんだもん。嫌でさ」

「だったら問題起こすんじゃねぇよ!」

文句たれた俺に怒鳴り声と一緒に土方さんのゲンコツが飛んできたけど、それはさらっとかわして。

近いのを逆手にとって耳元で、

「俺が問題起こしてもアンタが何とかして
くれるだろぃ?愛してやすぜ土方さん」

そうささやいてくすりと笑ってみせる。

元来俺に弱いアンタは大抵のことは大目に見てくれる。

「はぁ、ったく。なんか怒る気失せたわ」

ほらね。

やっぱりアンタは俺に甘いなぁ。

「だからお前のせいで溜まったストレス思う存分発散させろや。それでチャラにしてやるから」

・・・・・え?あれ?

「え?あの、土方さん?」

「今度は拒否権なんざねぇからな?俺のこと愛してるって言ったよな?覚悟しとけよ?」

にやりと嫌な笑みを浮かべた土方さんに今度は俺が頬を引き攣らせる。

「土方さん!ちょっとたんまっ!」

「俺の気がすむまで付き合ってもらうからな!」

いーやーだぁぁぁあぁあぁぁああーーー!!!

こんなことなら我慢して説教聞いてた方がましだった!

後悔先に立たず。

土方さんがさっさと満足してくれることを祈りつつ眠れない夜が始まった。

手招きは逢瀬の合図―笑った鬼が誘う夜






あとがき

こんな話じゃぁ無かったのに・・・・


なんでこうなったんだろう・・・


織希名様ごめん

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