□きみ攻略マニュアル
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俺の彼女、川瀬葵は世間一般で言うアニメオタクだ。
葵の部屋にある本棚には漫画とか小説がぎっしりつまっていて。
あちこちにポスターとかフィギアとかが置いてある。
別にそこを否定するつもりはない。
そういうのが好きなのは個人の自由だし、俺も漫画とか嫌いじゃないし。
何よりこの漫画のどこがよくって、とか話してるときの葵の笑顔も好きなんだ。
でも。

「あーん、もうっ!かっこいいよぉ!!」

さすがに家でデートしてる時まで漫画に構いっきりっていうのはちょっとムカつく。
ねぇほらカッコいいでしょ!
そう言いながら笑顔で漫画を見せてくる葵。
少年漫画らしいソレはバスケを題材にしたものだった。
当然出てくるキャラの大半が男なわけで、このキャラはここがカッコよくってこのキャラはここが可愛いなんて語ってる。

「…葵、いつまでそんなバカなこと言ってんのさ」

「だってカッコいいんだもん」

漫画を取り上げてそういえば、葵はむっと不貞腐れてもう聞き飽きた褒め言葉を吐き出す。
たしかに葵がカッコイイと連呼しているのは漫画のキャラだけど。
でも俺の前でもそーゆー発言するとか随分余裕だよね。
俺が何も感じないとでも思った?

「ねー返してよ」

「あとで返すから」

溜息交じりに漫画を少し離れた机に置けば、ベッドに寝転がっていた葵は不服そうに上半身を起こす。
ひどい、なんて言いながら漫画の方に手を伸ばす葵。
ひどいのはどっちだよ。

「バーカ」

「え、ちょっ…!」

伸びていた葵の右手をつかみ、体重をかけていた左手を崩す。
そうすれば葵は簡単にベッドに倒れこみ、俺はそんな葵を仰向けにして跨った。

「り、りりりリョーマ…っ!」

途端に顔を真っ赤にさせる葵は、やっぱり俺に弱いんだなーなんて軽く優越感に浸る。
好きな女が自分の行動ひとつで赤面するとか嬉しいじゃん?

「ねぇ葵…」

「な、なに…っ」

顔を近づけて耳元で囁けば、葵はぷるぷると肩を震わせて目をギュッと閉じた。
いいね、可愛い。

「葵はそんなに漫画のキャラが好きなの?」

「す、好き…だけどっ」

「ふーん…」

無意識に出た言葉がいつも以上に低いことに自分でも気がついた。
葵はびくっと体を震わせ、恐る恐ると言った様子で目を開いて様子をうかがってくる。

「でもさ、漫画のキャラは…こーゆーことお前にしないでしょ?」

そういいながら葵の頬をつーと撫でた。
この後の反応は容易に想像が出来て。
想像通り、葵は顔を真っ赤にしながらぽろぽろと涙をこぼした。
恥ずかしすぎると泣く、それが今現在治らない厄介な葵の癖である。

ぐすぐすと鼻をすすりながら、葵が頬にある俺の手を握る。
何をするのかと笑みを浮かべる俺は、きっと葵には至極意地悪に見えるのだろう。

「ま、漫画のキャラは好きだけど…っ!そ、それよりも…リョーマの方が、好き…だから、ね?」

恥ずかしがり屋の葵からそんなことを言われるなんて初めてのことで。
たぶん今の俺は間抜けな顔してるんだろうな。

「だ、だからその…安心してね?」

「バーカ。別に心配なんてしてないし」

漫画のキャラに嫉妬した、なんて。
そんな恥ずかしい情けないこと言えるわけがない。
軽く顔に熱が集まったような気がして、それを誤魔化すように葵の唇に食いついた。

あーベッドの上で彼女押し倒すとか俺も結構やるようになったよね。
前までテニスしか頭を占めてなかったのに、今じゃテニスも葵も同じくらい大事だ。
…いや、もしかしたらテニスよりも葵の方が大事かもしれない、なんて。
とりあえず今は葵を今以上に俺に惚れさせるのが目標かな。

漫画なんて目につかなくなるくらい俺のことを好きになればいいのに。
どっかに葵を俺にベタ惚れさせるマニュアルとかあればいいのに。
そんなことを本気で思ってる俺はかなり重症だ。



きみ攻略マニュアル




(…俺のこと、好き?)

(す、すす好きだよもちろん!)

(どれくらい?)

(えっとえっと…キャラの100倍くらい?)

(なんで漫画が基準なのしかもたった100倍?)
(…お仕置き決定)

(待って待ってゴメンナサイっ!)





お題サイト、確かに恋だった様より
 

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