□ウォーアイニー!
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───さて、どうしようか。

越前リョーマはとある店である物を吟味しながら心の中で呟いた。
既にこの店で悩み始めて早1時間が経っている。
店員はいかがいたしましょう?とにこやかな笑みを浮かべて問うてきた。
そろそろいつもの帰宅時間であり、特に今日は比較的早く帰りたい日である。
どうしようかと目を瞑って少し考え、そして目を開く。
2つで悩んでいたリョーマは、「こっちにするよ」と店員に告げた。



******************



一方、リョーマの妻である愛海は自宅で夕食を作っていた。
鼻歌を歌いながら作る料理は手がこんでいるものであり、実はリョーマが仕事に出てすぐに用意を始めていたものだった。

「……もうすぐかな?」

キッチンと繋がっているリビングの壁掛時計で時間を確認し、愛海は呟いた。
その顔には笑みが浮かんでおり、リョーマの帰宅を今か今かと待っているのがよくわかる。
夕食の用意を全て終え、盛り付けた食事をテーブルに並べた所でチャイムが鳴った。
リョーマはいつも帰宅時にチャイム鳴らさない。
つまりそれはリョーマではない人物だということだ。
愛海は不思議そうにエプロンを外してリビングのソファにかけ、玄関へ向かった。
少しでも安全なようにと自宅の玄関にはカメラが設置されており、それを家の中でも見ることが出来るようになっている。
それが近所の奥さんである事を確認した愛海は、今行きます!と返事をして玄関に向かった。

「すみません、お待たせしてしまって…」

「あら、気にしなくていいわよぉ。夕食どきにお邪魔したあたしも悪いんだから」

玄関に立っていた近所の奥さんは、ケラケラと笑って気にしないように告げる。
手には回覧板を持っており、どうやらそれが用事のようだ。
愛海が回覧板を受け取れば、奥さんはそれじゃあと帰って行った。
それを見届けて家の中に入ろうとした所で、愛海はとある人物を目に止めてぱっと花を咲かせた。

「リョーちゃん!」

それは自宅へと向かっているリョーマで。
愛称を呼ぶ愛海の声が聞こえたのか、リョーマは顔をあげて小走りで近づいてきた。

「おかえりなさい!」

「…ただいま」

笑顔で愛海に迎えられたリョーマはどこか嬉しそうで、いつも通りの挨拶をしてから、いつも通りに愛海とキスを交わした。
おはよう、行ってきます、ただいま、おやすみの計4回は少なくとも毎日キスをしている2人は近所でも評判のおしどり夫婦である。

愛海を後ろから抱きしめながら、リョーマは共に自宅に入る。
リビングのテーブルに並ぶ豪華な食事に、リョーマは張り切ったんだ?と微笑みながら問うた。

「だって、せっかくの結婚記念日だもん」

「…やるじゃん、さすが」

「愛しい旦那様を思ってのことですよ〜」

褒められた事が嬉しいのか、愛海は満面の笑みを浮かべながら言った。
食事後に渡すつもりだったプレゼントだが、リョーマは気が変わったのかポケットに手を突っ込んだ。
不思議そうに首を傾げる愛海の左手を取ると、ポケットから取り出したプレゼントを見せた。

「これ、愛海に似合うと思って」

「……え、ほんとに?」

はめてもいいかと問うリョーマに愛海はコクコクと頷く。
リョーマは愛海の小指にプレゼントをはめた。
それは、小さなクローバーを象った可愛らしい小指用の指輪だった。
ありがとう!と嬉しそうに笑う愛海に、リョーマもまた嬉しそうに笑った。


ウォーアイニー!


(この1年、俺のワガママに付き合ってくれてありがと)
(今年もよろしくね?)

(こちらこそ、よろしくお願いします!)
 

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