神の愛娘。
□プロローグ
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人は、産まれながらにして守護霊を持つらしい。
胸騒ぎや、俗に言われる"虫の知らせ"も、全て守護霊のおかげ。
そのおかげで、人は重大な出来事に巻き込まれてしまうことを回避することができる。
…まあ、守護霊たちも万能ではないため、すべてにおいて回避するということは出来ないようだが。
しかし、稀に守護霊ではなく守護神に見守られる人間もいるそうだ。
そして私は──その、稀な人間。
守護霊ではなく、守護神が私を守ってくれているらしい。
ある時、守護神と名乗る男の人が私の前に現れた。
その人は名前もなく、ただ、自分を私を守る神だと告げた。
普通、守護神も守護霊も影ながら見守る事しかできない。
が、私の守護神とやらは、力が強いから、という理由で私の前によく現れた。
私は、名前のないその人に、"シン"という名前をつけた。
神、という漢字の別の読み方からとった安易なものだったけれど、彼は喜んでくれたようだった。
親に捨てられ、孤児院で育った私の、唯一の家族になってくれた。
小学校を卒業した日、シンが私の前に現れて言った。
『お前は、もう自由に生きていい。広い世界を知り、大切な人を見つけ、幸せに生きろ』
と。
何がなんだか分からない間に孤児院から引き取られたらしく、新しい街につれてこられた。
『ここが、今日から瑠璃の家だよ』
シンは、私に向かって微笑んで言った。
目の前には一人で暮らすにはそれなりに広そうな、一軒家。
「…私、一人じゃ生きていけないわ」
『大丈夫、俺がついているから。…いつ、どこかで、何をしていても、俺はずっと瑠璃を見守っているよ』
シンはそう、私を安心させるように言った。
実際その言葉に安心したのは事実だけれど、でも、不安がなくなったわけではなかった。
シンはその事に気がついているだろうに、簡単に今後の説明をしてから、私の前から消えてしまった。
一人で住むには大きすぎる、三階建ての家。
不安を押し殺して家の中を見て回れば、唯一私の気を紛らわしてくれるであろう本が大量に置かれた書庫があった。
中学校が始まるまで、あと少し。
その間、私は必要以上に書庫からでることはなく、ただ"ひとりきり"という事実をみたくなくて、ひたすら本にかじりついていた。
2015.02.08加筆修正