神の愛娘。

□第三話
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さて、今の状況を簡単に説明しよう。

囲まれている。

それが今の状況だ。
おそらく先輩で、ファンクラブの人だと思う。
穏便派の人達は純粋に応援してるだけって朋ちゃんが言ってたから、きっと過激派の人達。

私が先生の手伝いで職員室に行って教室に帰ろうとしたら囲まれて、有無を言わさず屋上に連れてこられた。
リョーマ君に先に教室に帰るように言ったし、私がリョーマ君といない時を見計らったんだと思う。

「アンタさぁ、リョーマ君に近づくのやめてくんない?
リョーマ君だってメーワクしてるだろうしさぁ」

甘ったるい香水の匂いが鼻に付く。
中学生のくせになんで、こんなに厚化粧なのケバいの。
鼻がひん曲がりそう。

それに、リョーマ君が迷惑するなんて有り得ない。
彼は嫌なものは嫌とハッキリ言う人だし、第一基本彼から話しかけてくれるのに何故迷惑だと言うのか。
答えは単純明快。

この人達はリョーマ君という人をわかっていないから。

「聞いてんの?リョーマ君に付きまとうのやめなさいよ。
抜け駆けは許されないんだから!」

それはファンクラブのくだらない掟という奴で、ファンクラブでもない私が何故守らなければならない。

だからこそ私は正直に言おう。

「嫌です」

くだらないファンクラブの掟なんて守る筋合いはない。

「っ…何ですって!?」

「私はファンクラブでもないのに、何故ファンクラブの掟を守らなければならないのでしょう。
そもそも私とリョーマ君は入学してからずっと友人です。
リョーマ君がテニス部に入ってから彼のことを知った貴女方より私の方が彼と一緒にいる。
私の方が彼を知っている。
なのに何故?
何故私がリョーマ君と会話をする事によってリョーマ君が迷惑しているだなんて言うんですか?
貴女方にリョーマ君の何がわかるんですか?
リョーマ君に迷惑がられているのは貴女方でしょう。
アンタ達は掟を守っているんじゃない。
ただ嫉妬しているだけよ」

相手に口を挟む隙さえ与えないようにまくしたてる。
でも事実なんだからしょうがない。

「あ、あたし達が迷惑だなんて、なんで言えるのよ!」

「リョーマ君に聞いたからに決まってるじゃないですか。
よく私に愚痴を吐くんです、彼。
キャーキャーうるさい、とか。
香水臭くて気持ち悪い、とか。
まぁ愚痴は吐き出した方がスッキリするし私が聞いている次第で」

少しは自覚しているのだろうか、彼女達は下唇を噛む。

「お、覚えてなさい!」

何とも王道な(負け犬の)捨て台詞を吐いて屋上から去って行った。

あーあ、ここから教室まで時間かかるのに…。
先生の手伝いが長引いた事にしよう。

私は一応真面目キャラで通してるから授業をサボるつもりはない。

確実に間に合わないが、教室に向かった。

それにしてもあの人達、せめてナチュラルメイクにしてもっと素顔を見せればいいのに。
美人なのに、なんで化粧なんかで顔を隠すんだろう。
恥ずかしいのか?
いや、でもそれなら香水はつけなくても…。

って化粧したことも香水つけた事もない私が何を言っているんだか。

化粧してる人は顔を隠してる、とか言うけど化粧してない人が全員美人ってわけじゃない。

ホラ、私がそうだから。

…あれ、目から変な汁がでてきたぞ。
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