神の愛娘。

□第四話
1ページ/4ページ


翌日。

10時過ぎに家のインターホンがなった。
嬉々(きき)としてドアを開ければそこにいたのはやっぱりリョーマ君で。

「はよ」

「おはよう」

初めて見る私服姿のリョーマ君が格好いいなんて思ったのはリョーマ君に言ってなんかやらない。

そういう私は薄桃色のワンピースとデニム素材の上着を着ている。

「似合ってんじゃん」

サラッとそういう事が言えるリョーマ君はよっぽど女慣れしているのだろうか。
少しだけ淋しくなった。

「じゃ、行こ」

「うん」

家を出て鍵をしめ、リョーマ君と歩き始める。

「ナチュラルに何で手繋いでんの?」

私の左手はリョーマ君の右手とガッチリ繋がっていた。
さりげなく車道側を歩くリョーマ君が憎らしい。

「別にいいじゃん。折角のデートなんだし」

「これデートなの、初めて知ったよ」

「男女二人で映画行くんだからデートでしょ」

しれっというリョーマ君に思わず溜息がでた。

「こんなとこ学校の人に見られたら勘違いされるじゃない」

「別にいいんじゃない?俺としては嬉しいけどね。
それに……何かあっても、俺が守るし」

ニヤリと笑みを浮かべて、リョーマ君が言った。

あれ、何か今ドキドキしてる。

…当たり前か、リョーマ君みたいなイケメンに恋愛小説みたいな台詞言われたら誰だってそんな反応するよね!

うん、私はおかしくないわ。

「…ねぇ瑠璃」

唐突に名前を呼ばれた。

「何?リョーマ君」

「つけられてる」

「へ?」

「多分、桃先輩とかその辺り」

みるみる顔が赤くなる私とは裏腹に涼しい顔をしているリョーマ君。

「大方、偶々見つけたから尾行してみようとかそーゆーノリ」

迷惑な話だ。

「…ま、いっか」

「恥ずかしいわ」

「そ?…だんだん近づいてきてんのに」

リョーマ君がそう言った瞬間に振り返る。

「ゲ!」

そこには、テニス部レギュラーの一部がいた。

「やっぱ桃先輩と菊丸先輩と乾先輩か」

「加奈もいるよぉ」

'あの人'もいた。
やっぱり睨みつけてくる。

が、しかしリョーマ君は全力でスルー。

「先輩ら、何やってんすか。趣味わりーっすよ」

「スポーツ店に行った帰りに偶々二人を見つけてな。
面白そうなデータがとれそうだったから尾行したんだ」

悪びれも無く言う逆光眼鏡先輩。

「ところで君は姫路さん…だったかな。越前の恋人かい?」

「っな!?」

なぜか異様にそれに反応する'あの人'。

何故か、日に日に嫌悪感がましていく。
それはリョーマ君も同じらしく、なるたけ視界にいれないようにしていた。

「今は"まだ"友達っすよ、乾先輩」

逆光眼鏡先輩の名前は乾と言うらしい。
ノートに何かを書き込んだ。

「随分本気のようだな」

「とーぜん」

「…にしてもおチビ、意外だにゃー」

「越前って彼女いたんじゃねーのか?ホラ、ばあさんの孫と仲いいんだろ?」

チクリと少し胸が痛んだ気がする。

「……ああ、竜崎?別に何でもないっすけど」

「ね、ねぇ、リョーマくぅん。まさか、その子の事…」

「リョーマ君!急がないと映画始まっちゃうよっ!早く、行こっ」

'あの人'の言葉を遮ったため物凄く睨まれた。
でも、半分無意識のうちにそう言ってしまったのだ。

突然声を張り上げた私を、一瞬訝しそうな視線で見る。
他の先輩の視線も集まった。

「…ああ、そろそろ時間だっけ?行こうか」

リョーマ君が再び私の手をとる。
その行為が何故かとても嬉しかった。

「っリョーマ君!ど、どこ行くのかなぁ…?」

'あの人'が聞く。
リョーマ君は嫌そうな顔をしながら、映画の題名を言った。

そして、用は終わったと言わんばかりに歩き出した。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ