短編集

□日常的愛情思想
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前作→日常の変化



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俺の生活は数ヶ月前から家に居候するようになった澪とテニスを中心に回っている。
さすがに澪にかまけてテニスをしないってのは無理だからもちろんテニスは毎日してるけど…。
家の裏、寺にあるテニスコートで練習をしている俺の傍にはいつも、ニコニコ笑っている澪がいる。
手紙で簡単に説明しているから親父達からの仕送り金が増え、それで購入した衣服を身に纏う澪は誰がどう見ても可愛いと思う。

…少し前までは少しでも自重しようとしてたけどもう無理で。
開き直った俺は自重することを諦めた。
澪が可愛いのと澪を好きすぎる俺が悪い。
だから普通に携帯の待ち受け画面は澪の写真に変えた。
先輩らに見られてからかわれたけど変える気はないし別にどうでもいい。
…なんかその事、一気に学校中に広がったし、本当かどうかとか竜崎と小坂田に詰め寄られたけど。
しつこかったから竜崎達に携帯見せたら泣かれた。
………俺のせいじゃないでしょ、アレは。

今日は土曜日で、部活は午前中だけだった。
家に帰れば澪が昼飯作って待ってるだろうし、先輩達の誘いを断って家に帰る。
ニヤニヤして頑張れよとか言われたけど何、澪を襲えっての?
ウブな癖に煽る先輩達ってよくわかんないんだけど。

「ただいま」

玄関に入って声をかければ、いつもは満面の笑みを浮かべる澪が出迎えてくれる。
…でも、今日の澪は申し訳なさそうに眉を寄せ、表情を曇らせて出迎えた。

「澪、なんかあったの?」

靴を脱ぎながら問い、澪を見やる。
……あれ、朝行く時と服変わってる?
澪は下唇を噛み締め、俺にメモ用紙を差し出した。

『ごめんなさい!そうじ中に服をひっかけて、やぶっちゃいました』

スムーズに筆談が出来るようにするためか、簡単な漢字しか使われていない文字。
怒られると思っているのか、澪は怯えた様子でエプロンをギュッと握っていた。

「澪」

名前を呼べば、ビクリと肩を揺さぶる。
恐る恐るといった様子で顔をあげた澪。
その様子が小動物みたいに可愛くて、思わず澪を抱きしめたくなった。
それを必死に堪え、澪の頭を撫でる。
殴られるとでも勘違いしたのか、手を伸ばした瞬間の澪は身体を強張らせていた。
……ここにくる前、なんかあったのかな。

「澪は怪我してない?服なんてまた買えばいいじゃん、そんな消費物よりお前の方が大事でしょ」

キョトン、とした表情を見せる澪はメモ用紙に文字を書き始める。

『怒らないの?ムダな金つかわせるなって』

「当たり前でしょ。それより怪我、してんの?してないの?」

『してないです』

怪我してないなら良かった。
そんな意味もこめて澪の華奢な身体を抱き寄せた。
澪は顔を真っ赤にし、ワタワタと慌てたように腕を振る。
……可愛い。

『リョーマさん?』

「午後から、新しい服買いに行こうよ。俺が澪と買い物行きたいからさ」

こうやって先手を打てば澪は俺の誘いを断る事はないだろう。
予想通り澪はコクリと頷いた。



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