そうこ 


□3周年企画+α
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『夢想』〜プロローグ〜



ユーリは自分自身のことをトラブルメーカーだと思ったことはない。
何故なら、その大半が不可抗力であり、自分なりの信念に基づいて行動しているだけだからだ。
たとえ周りからトラブルメーカーと呼ばれようと、ユーリは自分でトラブルを作ったことはない。

そして今回も、ユーリはただ歩いていただけだった。
それなのに何故か、路地に倒れている人間を発見してしまったのだ。

「…どうしろってんだよ、はぁ…」

赤い長髪で、上等な生地かつ奇抜な格好の男が地面に横たわっていた。
一応、生きてるか確認すると呼吸はしている。
しかも顔を見ると、自分より年下のように見えた。

「おーい、こんなところで寝てると身ぐるみ剥がされるぞー」

正直、貴族と思われるコイツがどうなろうとユーリの知ったことではない。
けれど、ここで見捨てて何かあったのでは寝覚めが悪すぎる。
だから仕方なく起こしてやろうと肩を揺するが、一向に起きる気配はなかった。

「…ん、何だコレ…?」

ふと、寝ている彼の下に本のようなものを見つけた。
しかも本の表紙に何か光るものがあり、ユーリは好奇心のままその本を引っ張り出した。

「これ、魔導器か…?」

表紙には赤い石がついていた。
それは、自分が手首につけている武装魔導器と瓜二つだ。
そうなると、これは武醒魔導器でまちがいないだろう。

一見して貴族の坊ちゃんであることから、あり得ない話ではない。
しかも腰には剣がある。
だが、騎士には見えない。

その疑問の答えを確かめるため、ユーリは好奇心のままその本を開いた。
そして簡単に目を通したユーリは、目を丸くした。
誰かの直筆と思われる文字らしきものの羅列は、ユーリの知る文字ではなかったからだ。

「…古代文字か、はたまた貴族で流行ってる文字か。」

自分には理解できそうにないとユーリは本を閉じ、改めて彼を見た。
…さて、どうするか。
彼の寝顔は穏やかとは言い難く、今にも泣き出しそうだ。
それに加え、手は何か耐えるように握られており、ユーリは深々と溜め息を吐いた。

「…このまま放置しとく訳にもいかねぇよな。」

騎士団を呼ぶという手もあるが、下町のこんな路地で寝ているのには何か理由があるのだろう。
見つけたのが俺で感謝しろよ、と思いながらユーリは彼を背負い、宿の自室へと運んだ。





スキット『拾い人』


ユ「ったく、まさか人を拾う羽目になるとはな。」
ラ「ヴゥ…ワンッ!」
ユ「そうだな、拾っちまった以上は責任持たねぇとな。」
ラ「ワオーン!」
ユ「我ながら自分の性分には呆れるぜ。ま、ただの家出ならすぐにでも追い出すんだけどな…」
ラ「…ワフ?」
ユ「…コイツの剣、それなりに使い込まれてやがる。もしかしたら結界の外から来たのかもしれねぇ。」
ラ「バウッ!」
ユ「あぁ。もしもの時はフレンにでも任せるさ。」


 
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