短めな話

□緑と日向ぼっこ
1ページ/2ページ






「露草っ!つーゆーくーさー!露草ー!!」







緑と日向ぼっこ







「…お」


露草を探して回っていると、空五倍子と出くわした。


「裕か。どうした、何かあったのか?」

「露草はどこか知らないか?」

「露草か…。さっき、白沢とどこかに出かけておったぞ」


鴇時とねぇ…


「そうか、ありがとう」

「うむ」


今日は鶸もおらず、暇なので露草に絡もうとしていたのだが…。


「…先を越されたなー」


すぐに見つけてしまうのも面白くないので、適当に森の中をぐるぐるとしながら探す事にした。




10分ほど歩き回ったろうか、

「あ」

ようやく見つけた。



茂みと一緒に風に揺られる緑の髪。




「露草ー!」

「うわっ!?」


背後から頭を抱えるように抱きついた。

こういうのはわりかししょっちゅうなので、露草はすぐ冷静を取り戻す。
そしてこんな事をしてくるのは裕しかいないのも分かっており、どことなく眉間にシワを寄せる。

振袖に隠れていて、どうせ見えないのだが。


周りを見回したのだが、鴇時の姿は見当たらない。


「鴇時は?」

「なんで俺が知ってんだよ」

「空五倍子が、一緒に出かけたと」

「あいつがどこに行こうが、俺の知ったこっちゃない」

「ふーん」


ふわふわした髪に顔をうずめる。

あー、やっぱ緑の良い香りがする。


「とりあえずどけっ」

「えー」

「何がえーだ!せめて腕はどかせ、何も見えないだろうが!」


ゆっくりと腕を解いてやると、彼が振り返り目が合った。

顔が近かったので、額を合わせてみたり。


案の定、露草は顔を真っ赤にして再び前を向く。
変わらぬ初々しさに微笑みつつ隣に腰を降ろした。


「…で、何の用だ」

「んー、別にー」

「…だろうな」



「………」

「………」




特に会話もなく、木々や小鳥の声に耳を傾ける。




「……おい、裕」

「…ん?」

「いい加減なんなんだよ」


自分は露草にぴったりとくっつきもたれかかっていた。



なんだと言われてもなー……。

…そうだ。




「……んー」

「?」

「おやすみ」

「はっ、ちょっ、うわ!?」


露草を巻き込んで、後ろに倒れ込んでやった。


「何すんだよ、離せ!」


ジタバタともがくが
残念ながらこちらの方が力は強く、全く歯が立たない。


「せっかくの天気だ、日向ぼっこでもするのも悪くないでしょ」


そう言ってぎゅっと抱き寄せる。

身長がほぼ同じな(実は露草とが若干大きい)ので、抱き枕というよりは抱き合っているような態勢になってしまった。

が、寝るには充分である。


木漏れ日が降り注ぎ、緑の香りが漂い、優しい音が流れ、温かい。




「…完璧だな」

「何がだよ」


寝るのに、

と答えると、彼は自分が意地でも己を放さないと悟り、抗うのをやめた。



「なんでこんな目に…」

「…たまには、いいじゃないか」


いいながら冗談混じりにすり寄ってみると、露草はつと目を閉じた。




「……まぁ、たまにはいいか」




なんとなく、嬉しくなった。




「…露草」

「……んだよ」

「呼んでみただけ」

「…ふん。……さっさと寝ろ」







ーーその後

寝過ごした二人は、夕方頃に空五倍子に仲良く回収されましたとさ。



→おまけという名の舞台裏
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ