桜の話

□一章
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「・・・ん・・・?」
・・・朝?
「ええと・・・」

私、どうしたんだっけ・・・。・・・ああ。

「・・・そっか」

朝の光に目が慣れると、昨夜の出来事も一気に思い出された。
・・・ここが私の部屋なら良かったな。 ぐるぐると縛り上げられた私は、芋虫のように寝転がりながら溜息を吐く。叶うことならいつものように、暖かい布団の中で目覚めたかった。

「全部、悪い夢だったら良かったのに・・・」

昨日の夜、あの人達と出会った私が、引きずられるようにして辿り着いたこの場所。
ーーそれが、【新選組】の本拠地だった。

「私、どうなるんだろう・・・」

私はもう一度溜息を吐いた。その時ーー
ゆっくりとふすまが開いて、人の良さそうなおじさんが顔を出した。

「ああ、目が覚めたかい」

優しそうなその人は、井上と名乗った。

「すまんなあ、こんな扱いで・・・。今、縄を緩めるから少し待ってくれ」
「え・・・?」

井上さんは苦笑を浮かべながら、私をぐるぐる巻きにした縄を解いてくれる。・・・手を縛る縄までは、解いてくれなかったけれど。

「えと、あの、ありがとうございます」

私が頭を下げると、井上さんは少しだけ笑った。

「ちょっと来てくれるかい」
「え?」
「今朝から幹部連中で、あんたについて話し合ってるんだが・・・、あんたが何を見たのか、確かめておきたいってことになってね」
「・・・わかりました」

私は頷くと、よろけながらも立ち上がった。・・・井上さんは柔らかい言い方をしたけど、きっと私には断る権利なんて無いのだろう。
強張った私の顔を見て、井上さんは明るく言った。

「心配しなくても大丈夫さ。なりは怖いが、気のいい奴らだよ」
「はあ・・・」

・・・そう、なのかな?人斬り新選組のうわさは、私だって何度となく耳にしている。その幹部達がいい人だなんて、あんまり想像できないんだけれどけれど・・・。
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