雨夜の月見をした話

□一夜
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結局、

自分はどうやら別の世界から来てしまったらしいということがわかり、
妖たち…『天座』を治める白緑という名の大蛇の元に正式に世話になることになった。

皆は白緑を敬っているようなのだが、自分は恩人である鶸にのみついていく事にした。

それに、聞くところによると実は白緑と自分の年齢はそう変わらない。


…その割には老けていると思ったのは、

誰にも言わないでおこう…。






そんなある日





散歩をしていると、突然鶸が飛びあがった。当然自分もついていく。




「どうした?」


「少し、面白い事を思いついたんだ」






「ーーあそこ」




そこは、古い神社だった。

たしか、ここは白緑が危険だから
あまり近づくなと言っていた所だったような…。


鳥居が見えたので降りたとうとすると、

バチチッ、

小さく火花がとんだ。




「…結界?」


「ふん」




鶸は鼻で笑うと、火花をものともせず結界の中に突っ込んで行った。


更に火花が舞い踊る。


眺めている間、
彼は見事に結界に穴を開けて鳥居に足をつけていた。




「ほら、裕もおいでよ」




自分も同じようにくぐり抜け鳥居に着く。




「で、こんな所で一体何を?」


「まあ見てなよ」




のんびりと鳥居に腰掛けて話していると、

一人、

茂みから現れた。




「来た」




鶸はにっと笑うと下に声をかけた。




「君は姫巫女の『銀朱』さんだよね。

おどろいた、一人でそっちから近寄ってくるなんて」




いつもと変わらぬ口調と、
どこか馬鹿にしているような声音。



突然話しかけられ、
『銀朱』と呼ばれた人はポカンとこちらを見たまま特になんの反応もみせない。

そこへ鶸が、畳み掛けるように言葉を放つ。




「いいの?妖が目の前にいるのにボーっと見てて。

戦わないの?

俺が妖だってわかんないほど鈍いの?

顔も性格も間抜けとは救いがないね」




相変わらず彼の毒舌は容赦ない。





「ーーああ‼わかった‼」




銀朱がこれもまた突然声をあげた。




「?」


「ふふっ、貴方の正体はもう見破りました。」




楽しいそうに言われたその言葉に鶸はぴくりと反応した。
自分も多少なりと感心してしまう。

一目で鶸の正体がなんなのか分かる者はそういない。




しかし、そんな感心をよそに彼女は全く違う答えを出していたのだった。
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