-cronos-
□-Granberry-
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『いいか…黒髪の男…………俺は…必ず………!!』
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「――……ん…?」
とある街の広場にて、両手で後頭部を支え、仰向けの状態で眠っていた男は、ふとした事で目覚める。
「何だ…珍しく、変な夢を見てしまった」
ゆっくりと上体を起こし、思い切り背伸びをした後、重くなっている腰を上げる。
「…ふぅ……
この街にも、どうやら【強敵】は居なかったみたいだ…」
男はふと、広場の風景を眺める。
そこには黄色い布地の服を着ているべリオールの警備団や、青い布地の服を着ているグランドールの警備兵と思わしき人物達が行き交っている。
「それにしても……ここの街はホント、お堅い野郎共でいっぱいだな」
やれやれと項垂れながら、小さく片手を挙げ、苦笑を浮かべる。
「これじゃあ俺が【ハルティースの騎士団員】だとバレた日には、鬼の形相で襲い掛かって来る事だろうねぇ…」
おぞましい事を考え、ブルッと体を小刻みに震わせながらも、誰にも分からないようにフッと笑う。
彼の口から発せられた【ハルティース】という名前………
その名前こそ、記憶を失う前のリオネルが満を持して戦いに挑んだ天魔軍。その軍勢と協定を結んだあの【ハルティース帝国】である。
そしてどうやら、この男はハルティースの騎士団員のようだが……
果たして何故、グランドールとベリオールの警備兵が行き交う街並みに生息しているのだろうか……?