ボカロ

□ココロU
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その日からリンとレンの穏やかで不思議な生活が始まった。
それはまるで砂時計のように遅くて早く、早くて遅い時間だった。

「博士モウ就寝ノ時間デス」。

リンはできたてのミルクティーを運びながらレンに呼びかけた。
「いや、まだ平気だ。もう少し続けるよ」。
一瞬だけリンを見て、レンはすぐにパソコンに目を戻す。
運んできたミルクティーには左手だけで取っ手を探し、飲もうとしている。
「博士ハ何ヲ研究シテイルノデスカ?」。
「ん?あぁ、それは……」
そう言いながら人差し指をそっとリンの胸の中心に当てる。
「君のココロだ」。
「ココロ…?」。
「そう。君に人としての喜び、悲しみを教えてあげたいんだ」。
それはとても素晴らしいことだから―――――
子供のように明るく無邪気に話すレンとは対照的にリンは無表情だった。
「喜ビヤ悲シミハスデニ理解シテイマス」。
「……え!?」。
「喜ビトハ気分ガ喜ブコトデス。悲シミハ悲観デ気分ガ落チテイルコトデス」。
ハァ――――、と長いため息を吐いてレンは肩を落とした。
「違うんだよ、リン。ココロっていうのはそんな簡単に表せるものじゃないんだ」。
そう言いながらリンを見ると頭にいっぱいの?マークが飛び交っている。

――――まぁ無理もないだろうなとレンは感じた。
彼女は生まれてからまだ間もない。
いきなりココロを理解するなんて、赤ちゃんに世界地図を暗記させるようなものだ。
自分の持てる技術全てをつかって生まれたリンはまるで儚い花のようだった。

「今はまだ分からなくてもいいよ。だけどココロは神がくださった奇跡なんだよ」。
「キセキ…」。

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しばらくしてリンは目を閉じ「休止モード」にはいっった。
レンは相変わらず目の前のパソコンと格闘していた。

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