長編

□メイド服
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「黄瀬くん!」

「? 誠凛のカントクさんじゃないっスか 俺に何か用っスか?」

「実は頼みがあるんだけど…いい?」

「? 別にいいっスよ?」

「ホント!? じゃあさっそく…コレ着てちょうだい!!」

「えっ!?」





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「よーし!練習始めっぞ…って、黄瀬!なんだその格好は!?」


驚いた声をあげた日向さんにつられ、自然とみんなの視線が集まる

そして、全員が大きく目を見開き、中には口をパクパクさせてる人もいる


無理もない

だって今、俺は"メイド服"を着ているのだから―――




胸元が大きく開き、肩が露出したソレ
膝上までしかないスカート
黒いニーハイまで用意され、手首にはご丁寧にブレスレットらしきものまでつけられた



「あー…えっと…気にしないで進めてほしいっス!」

「気になるわ!ダァホ!」

「てか、なんでそんな格好してんだ…?」


火神っちに問われ、返答につまる
そこへ、俺をこんな格好にした犯人がやってきた


「ちょっとー?練習まだ始めてないのー?」

「カントク!黄瀬が変な格好してんだけど!」

「あーそれ?アタシがお願いして着てもらったから気にしないで」



「「「「「・・・・・・え?」」」」」



「いやー、一度着せてみたかったのよね! 黄瀬くんってモデルでスタイル良いし、肌綺麗だし、顔も整ってるし!! 絶対似合うと思って、急遽用意したの!」

「いやいやいや!おかしいだろ!」

「え?そお?」

「そうだよ!それに、あれじゃあ練習できねーだろ!!」

「黄瀬くん、練習無理そう?」

「えっ・・・いや、頑張ればなんとか……」

「ほらね☆」

「ほらね☆・・・じゃねーよ!星とばしてもダメだ!黄瀬、着替えて来い!!」

「ちょっと!まだ写真も撮ってないのよ!? それに、あの格好の方がやる気出るでしょ!?アタシが!!!」



「「「「「お前がかよ!!!!!」」」」」




「あの・・・俺は別に構わないっスよ?カントクさんのやる気が出れば、練習もいいものになるだろうし・・・」

「いや、でも・・・」

「ダメっスか・・・?」


しゅん、と悲しそうな顔をする黄瀬
そんな姿に日向は不覚にもキュンとしてしまった


「しっ…仕方ねーな! 練習になんなかったら、メニュー3倍だぞ!!」

「うええっ?!・・・了解っす……」





「ちわー」

「っ?!」

「青峰!!遅刻だぞ!!」

「あ?別にいいじゃねー・・・か・・・」

「あ、青峰っち・・・おハヨ・・・」


青峰が口をポカンと開け、黄瀬を見る
その黄瀬もどこか気まずそうに視線を彷徨わせる


「き・・・せ・・・? その格好・・・」

「こっこれは!誠凛のカントクさんに頼まれてっ!仕方なくっ!」

「・・・・・・」


青峰は驚きに目を見開いたままで、黄瀬はあわてて説明する
そんな2人を静かに見守る他のメンバー達

すると青峰がいきなり、黄瀬の腕をひっぱり、体育館出口へと歩き始めた



「っ!? おいっ、青峰!?」

「スンマセン。今日練習休みます、コイツと」

「へっ!!?」
「は!!!?」


日向が何かを言いかける前に2人は外に行ってしまった



「「「「「 ・・・・・・ 」」」」」



一気にしん、となる体育館
その沈黙を破るかのように、日向はぽつんと声を発する







「・・・練習はじめよっか……」



そして、その場にいた全員が静かに頷いたのだった―――









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