長編

□太陽と月と向日葵
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その日は空一面灰色の雲に覆われていた

そしてまだ昼間だというのに辺りは暗く、何だかイヤな雰囲気が漂っていた


(なんだこの感じ…?なんていうか、空気が…重い…?)



今まで感じたことのないような感覚に囚われ、俺は薪を拾おうとした手を止め、天を仰いだ


「大輝?どうかしたっスか?」

「あ?いや、なんでもねぇ」

「?」


(なんか…このままじゃ……ヤバい)


「ほっ、ほら!雨降りそうだし早く帰ろうぜ!」


直感的に“ここにいてはいけない”と感じた俺は、早く帰ろうと涼太を促す



「あっじゃあ先帰ってて!俺、もうちょっと薪集めるから!」

「まてっ!涼太!」


俺の言うことを聞かずに森の奥へと走って行ってしまった涼太

その瞬間、全神経がビリビリと警告を出してくる




だめだいくなそっちはキケンだ
キケン?なにが
わからない
うしなう
なにを…涼太を?
いやだそれだけはぜったいに
おれはあいつを涼太をかならず…




気がついた時には足が勝手に動いていた

何故かはわからない
でも、このまま涼太を置いて帰ってしまえば一生、涼太に会えないかもしれない
そんな感じがしたのだ

森の奥へと近づくにつれ、先ほどよりイヤな感じが強くなっていく


すると



『ゴァオオオオァァオオン』


「!?」


ドンッと硬い空気の塊が落ちてきたように一気に周りが重くなる


(さっきの…なんだ?叫び声…にしちゃあちょっと違う……人間じゃ…ない…?)


そこでハッとなる
さっきの音がした方向は、涼太が走って行ってしまった方向だ

自分の中で悪い考えに至る


「っち!」


走って走って…感覚を辿ってついた場所は、森を抜けたとこにある草原だった




「なっ…!」



数メートル離れたところにいたそれは、獣のような風貌をした虚だった
その大きさ、禍々しい霊圧に足がガクガクと震える

虚という存在は知っていたが、今までそのようなものに出会ったことがなかったのだ


なんでこんなところに虚が…という考えより先に視界に入ってきた光景に思考が停止する


(え……?)



全身の血の気がさぁっと引いていくのが手に取るようにわかった


「あ…あ…」

言葉にならない声が口から漏れ出る
手に持っていた薪がバラバラと足元に落ちる
頭が真っ白になり、息がうまくできない



虚が手に握っていたもの…それは
ぐったりと体の力が抜け、一輪の向日葵を手にした涼太だった――







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