長編

□太陽と月と向日葵
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「う…だい、き…?」

「っ!涼太!」

「だい…はや、く…にげ」

「今助け…っ!」


虚がこちらに気がつき、くぱぁと大きな口を開けた



『ゴオオオオァァアァァァァン』


「――っ!」


矢が突き刺さるような咆哮が響き渡る

俺はフラつく体をなんとか支え、足元にある木の棒を一本手にとった


「う、うあぁぁぁああぁぁ!!」


木の棒を振り上げ、勢いよく駆け出す
そして一気に間合いを詰め、涼太を握っている方の手首を狙い、振り下ろした


――はずだった



「え?」



それは当たることなく、宙を舞った
そして俺は大きく吹っ飛ばされ、木に強く背中を打ち付けられていた

「かはっ」


肺の空気が全て出されたことにより、一瞬息が止まる


「大輝!!」


涼太の声が、やけに遠くから聞こえてきた
打ち付けられた体も痛い


(やべぇ…体が…動かねぇ…
 痛みも…て、あれ?これって死ぬ…?)


朦朧とする意識の中、必死につなぎとめることしかできない
虚がいつの間にか目の前にいる

涼太が泣きながら俺の名前を呼び、手を伸ばしている

虚がもう片方の手をふりあげた


俺は最後を受け入れるかのように、静かに瞼を下ろした




「三天結盾!」

(――!)


ガンッと鈍い音が鼓膜に響く
覚悟していた痛みは襲ってこない


「よく頑張ったね。もう、大丈夫だよ」


ふわり
優しく温かい声が降りそそぐ

ゆっくりと視界に光を取り込めば、そこには涼太に似た、陽だまりのような微笑みを浮かべる死神がいた


「双天帰盾、私は拒絶する」


ぽうっと全身がぬくもりに包まれる
あれだけ軋んでいた体がどんどん癒えていく気がした



「やあぁぁぁぁああぁ!!」
「!!」
「!?」


突然の叫び声に驚き、見ると虚に掴まれた涼太が、黒い、空を割ったような空間に連れていかれそうになっていた


「りょ…うぐっ」

体が痛み、体を動かすことも、声をあげて名前を呼ぶことすらできない


「だいきぃ!!!」


ぼろりと琥珀色の綺麗な瞳から涙がこぼれでた
今すぐにでも拭ってやりたい




泣くな 泣くな

今 俺が 助ける

だから 泣かないでくれ

俺が――






「月牙天衝!」


白い衝撃波が虚のそれを切り落とす
地鳴りのような咆哮がまた辺りに響き渡った
するりと落ちそうになった涼太をオレンジ色の頭が受け止める

そのまま俺らの近くに降り立ちこちらにやってきた



「織姫、この子どうやら気ぃ失ったみたいだ。あとは頼む」

「任せて!気をつけてね、一護くん」

「おう」



俺よりずっと大きい背中が、虚に向かって飛び出した

涼太を救ってくれた恩人
その人の背中は大きく、そして……強かった


涼太が俺の隣に寝かせられた
一輪の向日葵を握りしめて












俺はこの時誓ったんだ


俺は強くなる 

強くなって涼太を…大切な人を護れるように

もうコイツが泣かなくていいように

コイツが俺の隣で笑ってくれるように


そのために強くなる



そう誓ったんだ――









To be continue.


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