短編

□暑気中り
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嫌になるくらい照りつける真夏の太陽
そしてこれまた嫌になるくらキツいロードワーク

こんな日にこんなものを長時間やれば、さすがの俺も気分は悪くなるわけで…



「おい黄瀬、大丈夫か?」
「だっ大丈夫っス!」



チームメイトに声をかけられそう答えたものの、実際は大丈夫なんかじゃない
頭はクラクラするし、足元もおぼつかない

幸い、今は10分の休憩だから何とかこらえてる
でも、やっぱりちょっとヤバいかも…






「どうした?」
「青峰っち…」


今にも倒れそうな俺とは反対にまだまだ余裕な表情の青峰っち…
「大丈夫か?」と声をかけられ、カッコ悪いところを見られてしまったという恥ずかしさと悔しさが込み上げる



「大丈夫っスよ?」


頑張って営業用スマイルをつくり、バレないよう答える
だけど、青峰っちは眉をひそめて俺を見た


(あれ…?バレてる……?)




すると青峰っちは、いきなり手に持っていたタオルを黙って俺の頭に乗せてきた


「無理すんなよ?」
「えっ…?」


もしかして…心配してくれた?
タオルからは青峰っちのにおいがして、一瞬思考が停止した


(って!なんだか俺、ただのヘンタイじゃないっスか!!)




「あ、ああ青峰っち!」
「ん?」
「俺っ、大丈夫だから青峰っち使って!?」

俺にタオルを貸したせいで青峰っちが倒れたら、そっちの方が嫌に決まってる


「あー…しばらく使ってろ。俺大丈夫だから」
「でっでも…!」
「いいから」


そう言うと、先にロードワークに戻ってしまった青峰っち
俺はキャプテンに怒鳴られるまで、その場に固まっていた






そして地獄のようなロードワークが終了し、俺は結局最後まで借りてしまったタオルを返すべく、青峰っちの元へと向かった



「青峰っち!タオルありがとうっス!」
「おう、…お前さ……」
「?なんスか?」
「日陰にいなくて大丈夫か?」
「へ?」

「いや、モデルなのに焼けたらマズいんじゃねーの?」


あれ…?暑さで頭、おかしくなったのかな?
青峰っちが青峰っちじゃないみたい



「だっ大丈夫っス!日焼け止め塗ってるし、ちょっとくらい平気っス!!」
「そうか…」


安心したと穏やかな表情を見せる青峰っちに胸がきゅんとなる
うーん…やっぱり暑さで頭がおかしいのかも








「青峰っち、この後時間あいてるっスか?」
「あ?あー…まあ」
「よかったら、一緒にマジバ行きません?」
「はっ?」
「タオル貸してくれたお礼!奢るっスよ!」
「いや、別に気ぃ遣わなくても…」
「いいの!俺、すごーく助かったから!ねっ?いいでしょ?」


ここで引き下がったら、男が廃る!
なんとしてでもお礼するっスよ!


「…仕方ねーな…そのかわり、セット奢れよ?」
「了解っス!」


今日だけは、この暑さにも感謝…かな?






























暑気中り


(なんだあの2人の生温い空気は)
(俗に言う”ホモセクシャル”ですかね?)
(ホモセクシャル?なにそれおいしいのー?)
(おいしいよ。色々な意味でね)





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