短編

□JEALOUSY
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※若干捏造




「笠松センパ〜イ……なんで俺が買い出し係なんスか〜」
「うるせぇ黙れシバくぞ」
「いてっ!もうシバいてるじゃないっスか!!」


隣を歩く先輩を見下ろしつつ、肩パンされたところをさする
この人、俺がモデルだろうがなんだろうがいつも容赦ない
痣ができそうっス……




今日は二日後に控えたウィンターカップ二回戦の為に笠松センパイと買出しに出た
普通、マネジャーとかベンチ入りしてない人がやるべきなのに何故か俺に指名がかかった




とあるお人好しすぎる先輩は
「いや、俺は止めたんだが……すまん」
あ、なんかこっちが申し訳なくなってきたっス…スマセン……


とある残念なイケメン先輩は
「嫌だったら合コンのセッティングしろ。あ、ちなみにお前は来るな」
明後日試合っスよ!?しかもセッティングだけさせるとか鬼っスか!?


とあるラ行の言えない先輩は
「買い出しも(り)っぱな(リ)バンの(れ)ん習にな(る)だ(ろ)う!!」
いやいやいや、ワケわかんねっス。あと、ラ行はっきりとお願いするっス


そして、隣にいる肩パン先輩は
「一年で一回も買出し行ったことねぇとかなんかムカつくから」
それって完全にストレス発散のためだけに俺を使おうとしてるっスよn
スマセンスマッセン!行きます、行きます!!行かせてくださいっス!!!



……というわけで、今に至るわけだ
なにも今やらせなくても・・・俺、一応レギュラーだし?
正直いろんな店に回ったせいで疲れた
練習休めたのはいいけど、これはこれで疲れたからあんま意味ない
これで試合に影響でたら先輩達のせいだ・・・



「黄瀬、今お前が何考えてるか手に取るように分かんぞ」
「うぇ?!センパイ・・・エスパー使えたんスか!?」
「バカ違ぇよ!!・・・どうせ『疲れた〜』とか『試合に影響でたら先輩達のせいだ〜』とか考えてんだろ」
「うっ・・・」
「すぐ顔に出んだよテメーは」
「スンマセン……」



そっか・・・俺、すぐ顔に出ちゃうんだ……気をつけないと
いずれセンパイの肩パンが腹パンになりそうだ





そんな恐ろしいことを考えながら、ストバスのコート脇を通る
ダムダムとボールをつく音が聞こえてきた
こんな時間に珍しいな、と思いコートに目をやる




「えっ・・・?」
「?どうしたき・・・ってうおっ!?」
「・・・っ!」





(見なきゃよかった・・・見なきゃよかった・・・!)



今見たことを忘れたくて、込み上げてきた涙を見られたくなくて、笠松先輩の手をとり走り出す




俺の馬鹿・・・!
昔からそうだったじゃないか
俺も、他の誰も入り込めないような絆があの2人にはあった
それが羨ましくて、悔しくて、悲しくて・・・


でも心のどこかでもう、諦めてたんだ
きっとあの人の瞳に俺だけを映すことはできないって――





「黄瀬!どうしたいきなり走り出して!」
「あっ、ごめんなさいっス・・・」
「……何かあったのか?」
「いや別に何も――」


「黒子と青峰が一緒にいたからか?」
「っ!!ち、ちが・・・」
「バーカ言ったろ?すぐ顔に出るって、今にも泣きそうな顔しやがって」
「……」



ああ。もう本当、自分自身が嫌になる
先輩にも迷惑かけて、2人を見ただけでドロドロと黒いものが俺ん中にまとわりついて・・・


俺は一体いつからこんなに最低なやつになってしまったんだろう?
自分の気持ちに気がつくまでは決してこんな気持ちになることはなかったし、あの2人が一緒にいようと構わず普通に・・・




なんであんなところに一緒にいたのかは分からない
昨日までお互い敵どおしで睨み合っていたのに
さっきの2人は――笑っていた




「黄瀬・・・?」
「えっ?あっ!なんスか!?」
「いや・・・大丈夫か?」
「だ、大丈夫っスよ?」
「……」


笠松先輩はそれ以上何も言わず俺を見ていた
その瞳は何か言いたそうで、それを振り払うかのように俺は歩き出した



「おい黄「ほら!早く帰りましょう?明日だって休みじゃないんスから!」


それからというもの、笠松先輩はさっきのことは一切触れてこなかった
優しい人だなと心の底から思った

(これだからついつい甘えちゃうんスよね〜・・・)


そんな自分もやっぱり嫌で

でも、いつまでたってもあの人に自分の気持ちを伝えない自分の方がもっと嫌で



どうしようもないこの気持ちを流すように俺は静かに涙を落とした























Jealousy

(いっそのこと、消えてなくなればいいのに)



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