短編

□おやすみなさい
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僕の隣の家に住む大我くんが風をひいた



大我くんはまだ幼稚園の年長さん
中2の僕とは8歳差

けど、大我くんはまだ5歳なのに自分のことはちゃんとやるしっかりもの
ご両親が共働きのためか自分のことは自分でやってしまうし、他の子のようにあまり甘えたりしない


家が隣同士で親同士も仲が良いせいか、僕はよく大我くんの子守りをする
そんなの必要ないのでは・・・と思うこともあるが、大我くんは僕とやるバスケを気に入ってくれたようで、暇さえあれば一緒にバスケをするようになった


僕の方が早くバスケを始めたのに、既に大我くんの方が上手かったりするのは・・・まあ、今回は触れないでおきましょう


そんなことより、先程も申し上げましたが大我くんが風邪をひきました

誰か薬の飲ませ方、教えてくれませんか・・・?











「ほら、ご飯のあとはお薬を飲まないと・・・!」


「いーやーだー・・・!」



困りました・・・
只今、土曜の12:30です
僕は大我くんの子守りの真っ最中

大我くんが昼食を終えたので、薬を飲ませようとしたのですが・・・



「どうして飲んでくれないんですか・・・!」



そうです。大我くんが薬を飲んでくれません

今も、家の柱にしがみつく大我くんを引っ張って、薬を飲ませようとしているんですが・・・


なんなんですか。馬鹿力ですか
明らかに僕のほうが年上で力も強いはずなのに、全然敵いません
どういうことですか



・・・まあ、そんなことはどうでもいいです
問題は、大我くんに薬をどうやって飲ませるか、なんですから

ちなみに、お医者さまからもらった薬は粉状のものとシロップ
シロップの方は、甘いせいかすぐに飲んでくれました

しかし粉状のは苦手らしく、袋を見たとたん逃げてしまいました


そりゃあ、薬でしかも粉状ですから苦いのも当たり前です

けど、大我くんはそれが嫌いらしく(ちゃんと子供らしくてよかったです)早く風邪を治すためにも飲んで欲しいのに飲んでくれません


「・・・っはあ」

引っ張る手を離し、その場に膝をつく


「大我くん、どうしてお薬を飲んでくれないんですか?」


「・・・にがいの、やだ」


柱に顔をくっつけたまま、ぶーっと頬を膨らませ言う
まだ熱があるせいか、それは若干赤い


「でも、お熱が下がらないとお外で遊べませんよ?」


「むー・・・それでもやー・・・」



僕にどうしろと言うのでしょう・・・

残念ながら、僕には魔法は使えないんですよ?


・・・仕方ありません
こうなったら最終手段です


「大我くん」

「・・・ん?」

「このお薬を飲まないと、お熱は下がりません」

「う〜・・・」

「そして、お外にも出れません」

「・・・・・・」

「そうなるとあることができません」

「・・・?」


「大我くんの大好きな"バスケ"です」

「!!」


大我くんがこの世の終わりみたいな顔をしてその場に固まる

そして、ブルブルと震えだしました


「た、大我くん?」


「・・・のむ」


「え?」


「だから、おくすり・・・のむ」


「ホントですか?」

コクリと首を縦に振る


やりました。成功です
その名も“好きなものでホイホイ大作戦”です

ネーミングセンス?そんなものミスディレクションしましたけどなにか?


とにもかくにも、ようやく大我くんが薬を飲んでくれます


薬を飲んだらお昼寝して・・・きっとその頃には大我くんも元気になってることでしょう

そうしたらご褒美に、大我くんの大好きなバスケを飽きるまで付き合ってあげてもいいかもしれません


でもそれまではゆっくり

























おやすみなさい


(君の元気が僕を幸せにする)






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