拍手&リク

□キミがほしい
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プルルル… プルルル…




土曜の午後練の休憩中、笠松の携帯が電話の着信を伝える
かけてきているのが誰かだいたい予想できるが、出ないで何回もかけられるのも迷惑なので笠松はとりあえず電話に出ることにした


「はい」
『あ、幸男ー?ワシやワ』
ブチッ

「・・・・・・」


今のは幻聴だ。そうだ練習後で疲れているんだ。そうに違いない
笠松はそう言い聞かせ、携帯を鞄にしまおうとしたのだが・・・



プルルル… プルルル…


はあ、と溜め息をつき、再び携帯を開く
今度は応答せず、無言で電話に出た

「・・・・・・」
『酷いやん!いきなり切るなんて!!ワシ、すっごく泣きたい気ぶ「黙れ」・・・はい』


開口一番耳元で叫んできたその口を閉ざすため、ドスの聞かせた一言を発する


電話の相手は桐皇学園バスケ部主将、今吉だ
夏のIHをきっかけに何故か連絡を取り合うようになったが、まさかここまでしつこく電話やメールを寄越してくるとは思わなかった

しかも、決まってこちらの練習が休憩に入ったりオフの日を見計らってかけてくるのだ
内容は部活動や普段の学校生活など世間話ばかり
お前はどんだけ暇なんだ、と問いたいほど執拗にかけてくるので、笠松も最近は相手にしなくなっていた


「大体、こっちが休憩になったとたん電話かけてくんの止めろよ!つーかなんでこっちの練習時間知ってんだよ!?」
『それはなー桃井が・・・』
「黄瀬だな分かった」
『ちょっ、えええ!?何で!?ワシは桃井て・・・』
「大方、青峰と予定合わせるために桃井と情報交換でもしたんだろ。あいつの考えることは大体読める」
『ふわ〜さすがはキャプテンやわ〜』
「茶化すな」
『茶化しておらへんよ〜ワシは幸男に対してはいつだって本気やで?』
「それがさらにうっとおしくてウザい」
『・・・まさか幸男の口から"ウザい"なんて言葉聞くとは思ってもみなかったで・・・』
「それは残念だったな。そういう風に見てんだからしゃあねぇだ『なるほど!』
「・・・は?」
『"ウザい"て思われてるのはワシだけなら、幸男の特別な存在ってことやな!』
「・・・・・・」


笠松は言葉を失う
そう、今吉は笠松にどんな罵倒を浴びせられても全てプラスに考え、勝手に納得し喜ぶ
どんな神経をしているのか疑うほどだ



「おい、だからちが・・・」
『おっ、そろそろ練習開始の時間や。すまんの〜幸男。練習終わったらすぐ会いに行くからな』
「いや来なくていい」
『じゃあまたあとでな〜』


プッ ツーツーツー


「っ、あっの野郎・・・!」

大事な所で話を聞かない今吉に苛立ち、携帯をギリッと握りしめる
そしてあることを心に誓った


(ぜってぇ会わないように帰り道のルートを変えて帰ってやる!)





これが、笠松にとってこの日唯一の汚点だった




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