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□もふもふ
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*もふもふ*
「……ったく、何処にいンだよ!!」
才蔵は森のなかをひたすら駆けていた。
理由は単純で、ただ佐助に逢いたかったからである。
城中探しまわっても佐助の姿は何処にもあらず、森に向かったはいいが……
「広すぎだろこの森!!」
広い森でたった一人の人間を探すのはなかなか難しく、気配を探ろうにも相手も忍。よりによって気配を消しているのだから見つからない。
探し始めて一刻ほど。
才蔵は何やら動物が戯れているのを見つけた。
しかし、動物はとんでもない数だった。
「………なんだこりゃ。」
木の上から地面に飛び降りてみると、大量の動物に埋もれる緑色の帽子をかぶった人物をみつけた。
「……なにやってんだよ、佐助。」
「……!!才蔵?」
やっと佐助を見つけ安堵の息を吐くと、才蔵は一歩佐助に近づく。
「何って…。みんなもふもふ、気持ちいい。」
「いや、それはわかるが…………。多すぎねェか!?」
鼬に狼、兎や狸。木菟などを合わせ総勢二十匹以上の動物に囲まれるというより埋もれている佐助を見て、才蔵は驚愕の声をあげる。
すると佐助は鼬を一匹掌に乗せ、才蔵に差しだし首を傾げた。
「才蔵も、もふもふする?」
「いや…。俺は遠慮しとく。」
何せこの鼬、才蔵を明らかに威嚇している。
才蔵を部外者と見なしているのか何なのか、とにかく威嚇してくる鼬に才蔵は溜め息を吐いた。
「才蔵、疲れてる?」
鼬を自分の頭の上に乗せると可愛らしく首を傾げ見上げてくる佐助に才蔵は、胸を高鳴らせるもぐっとこらえ、笑顔を見せると佐助の対面にしゃがんだ。
「疲れてねぇ。……ただ佐助に逢いたかっただけ。」
「ば、馬鹿伊賀っ!恥!!」
あまりにも直球な才蔵の言葉に佐助は顔を赤らめ目線を泳がせた。
そんな佐助に才蔵は微笑みを浮かべ、彼の額に軽く口付けた。
「恥じゃなくて、恥ずかしいんだろ?」
「い、否!そんなこと言うお前、恥!!」
佐助は本格的に顔を真っ赤にするとそんな台詞を言いながら、顔を見られぬように才蔵に抱き付く。
才蔵はそんな時間を楽しむように一笑すると、佐助を抱き締めたのだった。
(…?みんな、何処?)
(……空気の読める動物じゃねぇか。)
(…………??)
end.