混合系
□妖日和
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――これはまだ奴良家三代が共に生きていた時代の話。
その日、奴良組本家の小妖怪たちは客間の前に集っていた。
「何やってんの?」
そこにひょっこり現れた若君。
まったく気配を感じなかったことに小妖怪たちは彼に流れる血を実感した。
幼く、人間その物の姿であっても彼は『ぬらりひょんの孫』なのだ。
「実はですね」
「お前ら、さっきから何やってんだ」
「二代目!」
「おとーさん!」
小妖怪がリクオに訳を話す前に襖が開き、中から鯉伴が姿を現した。
彼はリクオを見てニッと笑うと小さな体を抱き上げた。
「リクオ、お前も客に挨拶するか」
「お客さん?だあれ?」
父の腕から部屋を見ると、祖父と見知らぬ男二人が中にいた。
藍色の着物を着た男と隈取りを施した一見外人のような男だ。
隈取りの男のそばには大きな引き出しがあった。
「おお!リクオ、来たのか。さ、こっちに来てご挨拶じゃ」
祖父に促され、横に座りペコリと頭を下げる。
「こんにちは、奴良……リクオです」
人間とも一緒に暮らす妖怪とも違う二人の雰囲気に戸惑いながらも挨拶すると、部屋の空気が柔らかくなった気がした。
「御隠居、お孫さんですか」
「あなたがお祖父ちゃんに、ね」「ふん!ワシも歳くらいとるわい」
「それよりも、菊、薬売り、俺の子はカワイイだろ〜!」
和やかな会話に、大好きな父にクシャクシャと頭を撫でられ、キャッキャと笑う。
幼子に釣られ、大人たちも笑う。
「変わらないものが、ありますね」
「そうですね。私が守るべきモノです」
藍色の着物を着た男がまっすぐ、親子を見つめる。
男の背をぬらりひょんがバシバシと叩く。
薬売りの男は小さな包みを二つ取り出した。
「気張りすぎてぶっ倒れんじゃねぇぞ」
「いっ!痛いじゃないですか」
「……お二方に差し上げますよ」
「おう、なんの薬だ」
「老体に善く効く薬ですよ」
ゼン一派の所へ行かねばならないと薬売りはその場を去っていった。
その際、彼に手を振ったリクオに薬売りが笑いかけたのを見て、大人たちは固まっていた。
「彼を笑わせるとは……その子、大物になりますよ」
「お前、すげぇな」
「?おとーさん、ぼくすごいの?」
「ああ、リクオはすごい子だ」
庭の垂れ桜が咲き乱れる春のことだった――