混合系
□王国ヘヨゥコソ!
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柔らかい陽射しがさす王城の中庭にて綱吉とリョーマは国王陛下に招かれ、茶会をしていた。
「どうだい?この国には慣れたかい」
「はい、日本のような習慣も多くて大分慣れました」
「ていうかほとんど日本だよね。生活的には」
「まあ、ローランのほとんどが日本人だからね」
優雅に紅茶を揺らしながら笑う国王。
風に乗り、フルートの音が聞こえてきた。それに合わせる《彼女たち》の歌声はとても楽しげだ。
「この声はエルとロレーヌかな?」
「イド子もいるんじゃない?」
「おや、μとφも来ているようだね」
ここは王城。地平線が交わる場所。それぞれの《物語》を超えて皆が音を響かせ合う場所。
だからこそ、毎日、こうして様々な音色が王城を彩る。
その様に、国王は驚き、そして歓び、筆を執るのだ。
そして新たな《物語》が生まれていく。
けれど、いつも和やかな空間であるとは言えず、騒がしいことももちろんある。
「イタタタ!《お嬢さん》、私の耳がとれてしまうよ」
「陛下!この“マダオ”をどうにかしてください!」
菫色のドレスの少女がプリプリと怒りながら一人の男を引っ張ってきた。その男に向かって言った一言にリョーマと綱吉は盛大に噎せる。
「マ、“マダオ”……っハハハ!」
男を指差しリョーマが爆笑する。男の眉間がピクリと動いたのを見て、綱吉がリョーマをたしなめながら少女、ヴィオレットに話をふる。
「ヴィオレット、その言葉、どこで覚えてきたの?」
「ローランに『全くダメな男』の意だと教えてもらいましたわ。それより!この男ったらムシューにまた卑猥な言葉を……」
捲し立てるように男に対する不満を国王に訴えるヴィオレット。主、イヴェールに対し少し過保護なところがある、彼女とその対はこうなるとしばらく止まらない。
その不満の矛先である男はどこから取り出したのか、如何わしい本を読み始めていた。
ニコニコ笑いながら相槌を打っているが、この国王はちゃんと話を聞いているのだろうか。そう思いながら、二人はその様子を見詰めていた。
音の絶えないこの国は今日も平和だった。
拝啓、僕らの大切な人たち
今、僕たちはしあわせです――
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