混合系
□人と為らざる者の邂逅
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11月に入って、一段と寒さが厳しくなってきた浮世絵町。鯉伴は今年小学校に入った一人息子、リクオと庭を散歩していた。学校であった出来事を話したり、周りの小妖怪にイタズラしながらゆったりと過ごしていた。
「かっぱ、さむくないの?」
「心配してくれるんですか、若様」
「だって、かっぱはいつも水の中。かぜひいちゃうよ」
「ありがとうございます。けれども河童は水に棲むもの、簡単に風邪をひいたりいたしませんよ」
我が子が、庭の池から顔を出した河童を気遣う様を、いとおしく誇らしい気持ちで見守る。
やんちゃではあれど、母に似て優しい子だと思う。
人間の社会での出来事を聞くたびに、僅かながらも妖怪の血を引くが故、この子が経験するだろう別れを思うと、切なくなる。それは自分自身も半妖であるからであろう。
そんなことをつらつらと考えているときだった。
「うわああああああああああん!!」
突如、聞こえた泣き声に思考を断ち切った。しかし、泣き声の主は我が子ではなかった。我が子はむしろ、誰だろう、と駆け出してしまっていた。
鯉伴は慌てて追いかけた。子供の足と侮るなかれ、子は時に思いもよらぬ素早さを見せる。特にリクオは元々足の速い子だ。現に、追い付いたと思ったら、すでに泣き声の主がそばにいた。
その子は色の薄い子だった。磨かれた銀のような頭に、朝日と夕日を灯した瞳、雪のような肌。年はリクオと同じくらいだろうか。
「おとうさん、この子まいごみたい」
「いや、その前に……」
どうやって、この屋敷に入った。
奴良家は関東妖怪任侠の総本山。昼間も本家妖怪達が見張りに立っている。子供一人がどうやって入ってきたのか。
それに、この子供が人間とは思えない。
「りょうしゅさま、どこぉ?」
子供が鯉伴を不安そうに見上げていった。“りょうしゅさま”とは“領主様”と言うことだろうか。ならば、地方の神、または大妖怪が来ているのか、嫌でもそんな話は聞いていない。父の客か、それとも。
「二代目〜!人間の客が来ましたよ〜!」
「あ?人間の客?」
報せに来た妖怪に子供たちを託し、こんな時にいったい誰だ、と少し苛立ちながら、正門の方へ向かう。
来ていたのは不思議な男だった。見た目はただのお洒落な青年だが、雰囲気が普通ではなかった。
「やあ、君がこの家の主かい?すまないがここに銀髪の少年がいると思うんだが」
銀髪とは先ほどの子供ならば、この男は“りょうしゅさま”だ。
「ああ、確かにいるよ。ただ、あンたら一体、何もンだい?」
「僕ら?僕は人間だよ彼は……」
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