アネモネの咲く朝

□5話
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今朝から普通科(デイ・クラス)の女子は浮き足だち、夜間部と唯一会うことが出来る門の前へと集まっていた。

集まる女子の手には可愛らしいラッピングに包まれたチョコ。

女子に毎年人気のあるイベント、『聖ショコラトル・デー』が今日なのであった。



ピピィ――――ッッ


「普通科の皆さんはこれから授業があります!教室に戻ってください!」



守護係(ガーディアン)である優姫はまだ朝なのにも関わらず、門の前で待っている女子の多さに驚いていた。

笛を吹いて教室に帰るよう促すが、それを無視してどうにかチョコを渡そうと奮闘する女子がいる為効果は全くないように思われる。


暫くして零が現れ、女子達に警告を流したことで漸くその場は丸く収まった。





***





「何かのはずみで夜間部の正体がばれるかもしれない。いつも以上に気を張ってくれたまえ!学園守護係の諸君!!」



怪しげな恰好をする理事長の前には零と優姫の2人が。



「はい理事長っ!」

「んな行事禁止すりゃいーだろーに…」



2人が返す返事はお互いが全くの正反対のものだった。



「錐生くん…そんなコトしたら暴動おきるよ?ガス抜きだよガス抜き」



理事長は続け様にそれもこれも吸血鬼の彼らが優秀すぎるせいだね、と褒めると零がギラリと理事長を睨んだ。



「…まあはるか昔から吸血鬼は人間の"敵"だったわけだけど…"平和な共存"をのぞむ吸血鬼もいるんだよ…」



いつかはボクの考えを理解してほしい、と零に同意を求めるが零は目線を逸らし無理だと否定する。



「"奴ら"は人の生血を啜る人の形をした猛獣…だからかい?」

「………」



段々と雰囲気が重くなっていくのを感じた優姫は空気を変えようと咄嗟の行動に出た。



「はい!理事…お義父さん!聖ショコラトル・デーのプレゼント!!」



予想だにもしなかった優姫の行動に二人は1拍遅れてから反応した。



「優姫の肩もみもみ券二十回分だーっ」

「パシリ券一回分……」



漸く雰囲気がいつもの調子に戻ったと、優姫は理事長が嬉しさに浸っている間に零の制服を引っ張り部屋から出て行った。






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